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キラキラと光り輝く白銀の世界___
その世界に立つことが出来るのは一人だけ。
点を競い、己の表現力、技術すべてを晒す。
その舞台は孤独との戦いだ
その舞台には1人しか立つことができない。
しかし、誰がそう決めた?
点数が全てじゃない。
楽しませなきゃ意味がないのよ。
驚きがなければ人生がつまらないじゃないか。
さぁ……舞台の幕が開く。
魅せましょう、最高の美しき世界を
私の、私たちの舞台をお見せ致しましょう。
とあるスケートリンクは異様な光景に包まれていた。
スケートリンクには複数の人間が佇んでいた。そのものたちの衣装はとても異様である。スケートにはふさわしくない、インカムを付け、袴に浅葱色の羽織、赤いマフラーを巻いたもの、煌びやかな平安の着物に身を包んだものたちがずらりと前を見据えて
赤いマフラーを巻いた彼が一歩前へ出る。
「さぁ、始めようか」
彼の声とともにすべての物語の幕が開く。
彼らの滑りに誰もが引き込まれていく。彼らの物語にどんどん引き込まれていくのだ。スケートリンクとは思えない。まるで舞台のミュージカルがリンクで行われているのだ。彼らの歌声。
これといって大技はないが何故か魅了される。
アップテンポの曲から今度は激しい戦闘の音楽へとめまぐるしく変わっていく。そして舞台の終盤に差し掛かった時、リンクに一人だけ赤いマフラーを巻いた彼が天を見上げ片手を伸ばす。何かにすがるような、そんな彼の表情に仕草に、皆が静まり返る。
銀の刃が氷上を削る。静かに始まる彼の演技に誰もが息を飲んだ。
目に見えない何かにすがり、逢いたくても逢えない。手を伸ばせば直ぐに届きそうな場所にいるのに届かない。
どうして?どうして?
悲愴、悲しみ。孤独、そして哀愁漂うその仕草。
一人にしないで
俺を愛して?
孤独の中に取り残された彼に仲間たちが声をかける。そして彼は孤独から立ち上がり
新しい一歩を踏み始める。
長時間にわたる演技に誰もがスタンディングオベーション。沢山の拍手が会場を包み込んだ。
撮影禁止、雑誌、情報各社、テレビ局、取材は不可。
まるで夢の世界だと__誰かが言った
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作者名:あさぽん | 作成日時:2016年11月10日 22時