【鬼滅の刃】愛してる、誰よりも。【短編集】

☆叶わぬ叶わぬ【魘夢】 ページ33

人の歪んだ顔が好きだった。
それが、柱の人間となると余計に楽しい。



「魘夢……。私は、貴方を絶対に許さない。」

「そっか。それでもいいよ。今日も、愛してる。」

いつもと変わらない、朝の恒例行事。
ただ勝手にAに口付けをして、今日も約束を守らせる。
それは、“恋仲の契を交わす”ことだ。

身動き出来ないAの後輩を人質にとったら、あっさり承諾してくれた。
きっと、そいつが核を壊される直前だと気付いたんだろう。

「可愛い可愛いA。今日も、一日楽しませてね。」

更に深く口付けをする。
苦しそうなAの声に、今日も一日鬼殺隊を減らそうと決意する。

鬼殺隊を一人残らず倒して、Aの頼る存在が無くなったら…、なんて考えるだけで興奮してしまう。

早くそんな未来になれ。
早く、早く、Aの歪んだ顔が見たい。



「お願いだから、そんな目で見ないで。」

「そんな目？」

Aは、任務が終わると素直にここに戻ってくる。
そして、最近は命令をしなくても、此方に歩み寄るようになった。


何が、Aをそうさせたのか。


何度考えても答えは出ないが、関係ないだろう。
とりあえず、可愛いAの口に飯を入れ込む。

そうしなければ、死んでしまうから。
誰の手にもかけられず死ぬのは、一番つまらない。

「……ごめんなさい、勘違いだった。」

「ちゃんと謝れたね。偉い。」

「ちょっと、何度言われおうとも貴方と口付け以上の関係にはならないって！！」

「構わないだろ。Aは、もうきっと人間じゃ満足出来ないだろうし。」

「うるさい！！黙らないと首を斬るよ！！」

Aは、案外こういうことにうるさい。
さっさっと手を出してしまえば、歪んだ顔も見れるというのに。

手を出せない自分に気付いたが、全く答えは出ない。
何故、Aに手を出せない？

「A、例えこの先の関係になれずとも、愛しているよ。」

「うるさい。」

ただ、この関係に甘えている自分がいるのには、気づいてしまった。

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