【鬼滅の刃】愛してる、誰よりも。【短編集】

親分の優しさ【嘴平伊之助】 ページ6

「猪突猛進！ 猪突猛進！ 」

「わっ、伊之助、危ないよ！」

大きな岩を持って走る彼に、注意をする。
私の声など聞こえてはいないだろうが。



「伊之助、もうやめなって！」

「猪突猛進！ 猪突猛進！」

「ちょっと…！」

山の中を駆け、先程より大きい岩を次々に持ってくる。
段々と大きさも大きなっていき、流石に止めた。

「俺は、もっと大きいのを持ってくるぜ！！」

「もう、十分分かったからやめなよ。」

「行くぜー！！！！」

「あっ、こら！！伊之助！！」

何故、この場に炭治郎と善逸がいないのだろうか。
ため息をついてもついても、つききれない。

「…A、もっと、もっと大きいのを持ってきてやるからな。」

「伊之助、もう、十分だよ。」

普段見ない優しい笑みを見れて、少しドキッとしてしまう。
普段は、猪突猛進！ 猪突猛進！ と勢いのある伊之助だが、こういう優しい所は私だけが知っている。


怪我をした時、歩ける程度の怪我でもなんでもいつも私を抱き抱えてくれた。

『俺は、Aの親分だからな！もう、怪我すんじゃねぇぞ！』

『うん、ありがとう。伊之助。』

泣いている時、何も言わず傍にいてくれた。

『もっと、もっと、強くなるからっ…！伊之助っ……！！』

『…鍛錬、付き合ってやるよ。』

私が楽しい時、いつも伊之助の笑顔があった。
どんなに落ち込んでいても、伊之助さえいれば笑顔になれた。


「ねぇ、伊之助。あれで、良かったんだよ。」

悔しい、彼が泣いている時私は傍にいられない。

「Aっ……。なんで、死んじまうんだよ…！！俺なんて、庇われなくても死なねぇっ…！！」

「ごめんね、伊之助。」

そう、彼はずっと私のお墓を作ってくれている。

私は、彼を抱き締めるけど、伝わらない。



ああ、私の愛しき人。どうか、泣かないで。

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