佰陸拾仇 ページ19
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小「…………姉様…?」
『……ぉ、…ぃ……』
あれ?声が出ない。
"小芭内"と呼んだはずの掠れた自分の声が情けなく聞こえて思わず笑うと、また涙が零れた。
『…んんっ、あー、あー』
よかった、声出た。
私が発声練習をしている間にも、流れ続ける涙を小芭内が掬ってくれる。
小「…………泣くな。俺が泣く予定だったのに、先に姉様に泣かれてはどんな顔をすればいいかわからない」
『ふふ、小芭内が泣いてしまうのは嫌だな。先手を打って正解だった』
布団の中から小芭内を見上げる。何故だかもっと涙が溢れた。
小「…どうしたんだ、嫌な夢でも見たか」
『そうだね、でも、もう忘れたよ。小芭内のおかげかな』
小「なら何故まだ泣いているんだ」
『何故だろうね』
言って身体を起こすと、優しげに緩んでいた眉頭が困ったように歪んだ。
小「…おい!まだ起き上がるのは…!」
『大丈夫、もう傷も塞がってるようだし』
小「それでも駄目だ」
『頼むよ、なんだか抱きしめて欲しい気分なんだ』
小「ッ……」
『駄目、かな』
迷惑も心配もかけていたことは百も承知だ。
でも今は、その温もりに触れていたかった。
『ね、お願い』
私が腕を広げるより早く、温かい腕に包まれる。
小「……っおい、なんでもっと泣くんだ…!」
『ごめんよ、グスッ、ごめん、小芭内、ありがとう』
額をぐりぐりと肩口に寄せれば、懐かしい香りがした。
自分と同じ、でも少しだけ違う、家族の匂いだ。
その事実に、また涙が滲む。
『すまない、感情の整理が上手くいかないんだ、どうしよう。こんなのは初めてだ』
小「………どうもしなくたっていいだろう。泣きたい時には泣けばいい」
『小芭内が居てくれて良かった、ほんとうに』
小「…俺は、姉様が嫌というまで傍に居る」
『じゃあ、ずっとだね、おかげで寂しくない』
小「……あぁ、ずっとだ」
『嬉しい、小芭内は優しいね、欲しい言葉ばかりくれるんだね』
小「当たり前だ。姉様が大切だからな」
『大切…ふふっ、私も、小芭内が大切。愛してるよ、大好きだ』
小「…ッ俺も、愛してる」
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らっつ - 久々に見に来たら更新されてびっくり。素敵なお話をありがとうございます! (8月31日 22時) (レス) @page25 id: c7494693fb (このIDを非表示/違反報告)
透水 - 終わり!?続きは無いのでしょうか… (7月21日 13時) (レス) @page25 id: e8fae7b723 (このIDを非表示/違反報告)
とく(プロフ) - 面白いです、続き待ってます!! (7月21日 0時) (レス) id: 72e740ca3a (このIDを非表示/違反報告)
ppp - 更新、本当にありがたいです!いつまででも待っております。更新よろしくお願いします! (7月20日 10時) (レス) @page25 id: 746217eb38 (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - うん.....泣きましたぁ( ;∀;) 本気と書いてマジで (6月15日 14時) (レス) @page25 id: 91d89c4fce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M2 | 作成日時:2020年6月4日 20時