佰陸拾捌 ページ18
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……ここは、何処だろう。
目を開けているのか閉じているのかもわからない暗闇の中。
闇と同化したように、私はひとり、その中をゆらりと揺蕩っていた。
あぁ、いやだな。暗いのは怖い。
意味もなく夜を耐えていた毎日を、思い出してしまう。
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一人で家に居ると、不意に静けさに襲われることがあった。
自分の呼吸音だけが聞こえるその空間が妙に、僅かに、恐ろしく感じた。
これが"寂しい"という感情なのだろうか、と自己完結して、だからといってそれから特にその生活が変わることもなく。
私は、親の顔なんて知らない。
昼は学校で友達と話し、夜は家で一人、空が明らむのをひたすらに待つ。
何年経っても夜はあまり好きにはなれなかった。
待ちに待った朝は相変わらず静かで、何を思うこともなく、自分の息の音を聞きながら身支度をする。
そんな他愛のない毎日だ。
深く考えることは無かった。
考えることが出来なかった。
これが日常なのだと信じて疑わなかったから。
なんとなくでしか知らないその感情が"寂寞"だと、一人前に肯定することができなかったのだ。
生まれ変わってから、誰かと生きることを知ってから、私はもっと臆病になった。
二人から一人になるのは、寂しかった。
暗い洞窟で一人夜を明かす事も何度もあった。
空気が水分を含み、肌に不快感を残す。何処まで続いているのか分からない洞窟の奥から、風の唸る音が響いて、それが怖くて一睡もできない日もあった。
そのうち私は夜に眠るのを辞めた。
明るい陽の下で申し訳程度の睡眠をとる。
初めは体調の優れない日も続いたが、それも直ぐに慣れた。慣れなければいけなかった。
自分の世話をできるのは自分だけ。
知ってしまった寂しさを埋めてくれるような人もいない。
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夜は独りが怖くて泣いていた。
ずっと、ずっと昔からだ。
寝ても覚めても、孤独感が付き纏う。
眠りから覚めて、孤独を自覚するあの瞬間が、私は怖くて堪らなかった。
別に、"明日は何かが変わってくれる"なんて期待していたわけじゃない。
わかっていた。
生まれ変わっても結局私は一人だったのだ。
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覚めても独り。
起きるのが怖くて流れた涙を、誰かが優しく拭った。
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らっつ - 久々に見に来たら更新されてびっくり。素敵なお話をありがとうございます! (8月31日 22時) (レス) @page25 id: c7494693fb (このIDを非表示/違反報告)
透水 - 終わり!?続きは無いのでしょうか… (7月21日 13時) (レス) @page25 id: e8fae7b723 (このIDを非表示/違反報告)
とく(プロフ) - 面白いです、続き待ってます!! (7月21日 0時) (レス) id: 72e740ca3a (このIDを非表示/違反報告)
ppp - 更新、本当にありがたいです!いつまででも待っております。更新よろしくお願いします! (7月20日 10時) (レス) @page25 id: 746217eb38 (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - うん.....泣きましたぁ( ;∀;) 本気と書いてマジで (6月15日 14時) (レス) @page25 id: 91d89c4fce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M2 | 作成日時:2020年6月4日 20時