佰拾参 ページ13
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獪岳side
『…落ち着いてきたかい』
獪「…………あぁ、眠い」
『それはよかった……』
獪「………はぁ………」
Aの胸元から顔を上げ、肩に顎を乗せた。
獪「……なぁ、」
『……ん…?』
獪「……俺、やっぱ使えねぇわ、壱ノ型」
『…………そっか』
獪「…やるだけやったんだけどよ、無理だ。なんかもう、疲れたよ」
鍛錬する度に、砂を噛むような思いに嵌る。全てが無意味に思えて仕方が無い。
『…疲れるのは、頑張ったからだよ。そういう時は自分を甘やかしてあげないと。
……でも獪岳くんは自分に厳しくできる子だから、ついつい頑張りすぎちゃうんだよね。
だから、獪岳くんの分も、私がたくさん甘やかしてあげるからね。少しでも辛くなったら、またおいで』
疲れるまで頑張ってるんだね、偉いね、偉いね、とあやす様に頭を撫で続ける。
その手が少しずつ速度を落とし始めた。
獪「………A、もう眠いのか」
『………うん…今すぐ寝れる……』
獪「………………まだ起きててくれよ」
『…うぅ〜ん……………』
幼子が愚図るように、俺の肩に顔を埋めたA。
それだけでまた俺の心臓は情けないほど早鐘を打った。
獪「…………なぁ、A…」
Aの背中に両腕を回して抱きしめる。
薄い肩は、俺の腕が一周するのに十分すぎる細さだ。
獪「……俺、お前に一つ、嘘吐いたわ」
俺の頭を撫でていた腕が落ちる。首元で、小さな寝息が聞こえてきた。
獪「…………俺さぁ、お前に会いに来たんだよ」
まさか、本当に会えるとは思っていなかったがな。
獪「…お前の綺麗な顔見りゃ少しは落ち着くかと思ってよ…
……なぁ…ホントに落ち着いたわ……」
なんか、お前に助けられてばっかだな、俺。
獪「……来てよかったよ」
すっかり眠ってしまったAを布団に寝かせる。
ふにふにと頬を触っても、もう起きる気配はない。
獪「…………寝たか……寝たよな……?」
Aの頭の両側に手をついた。重みで畳が小さく軋む。
そのまま片肘を床につき、距離を縮めた。
獪「……忠告は、したからな。責めんなら俺じゃねぇぞ」
心地良い香りに酔わないように息を止め、
起きるな、起きるな、と念じながら、
獪「………………好きだ」
Aの額に、静かに唇を落とした。
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MARE(プロフ) - 海の中で目開けでも染みませんよ。普通の水と同じです(体験談) (2021年6月26日 20時) (レス) id: 7446762651 (このIDを非表示/違反報告)
かん - お久しぶりでございます…!楽しみにしてました。これからも楽しみに待っております! (2020年6月7日 16時) (レス) id: b9832c7634 (このIDを非表示/違反報告)
翔(プロフ) - すごいハマってます。小芭内かわいいです/笋靴砲呂燭泙蠅泙擦鵝そしてむいくんの可愛さも尊い 小芭内が一時期愈史朗くんに近かったのが笑いました。これからも楽しみにしております。(^-^) (2020年6月3日 2時) (携帯から) (レス) id: b9fae3d1e9 (このIDを非表示/違反報告)
shion - 久しぶりの投稿嬉しいです!!続きも楽しみにしてますっ! (2020年6月2日 1時) (レス) id: bbadf961a9 (このIDを非表示/違反報告)
紅蓮(プロフ) - めっちゃハマりました!!続きが読みたいです!更新頑張ってくさい! (2020年5月26日 22時) (レス) id: d6f1919e89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M2 | 作成日時:2020年1月31日 20時