嘘つきな清純【雪】

30.匂い付けたい犬的な（渡辺side） ページ30

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家に帰ってそのまま風呂に直行しようとしたらリビングの電気がついていてこの時間に珍しいと思って扉を開けた。


『…おかえり』
渡「ただいま…なにしてんの？」
『映画観てる』


ソファの下に座ってブランケットをかけながら映画を観ていたらしいA。

気付けば彼氏？元彼？とも落ち着いたらしくこの家の住人としてめちゃめちゃ馴染んでいるこの元同級生。


『…さむい、閉めて』
渡「ん、」


すぐ風呂に入ろうと思ってたけど一旦扉を閉めてAの横に体を向けて座った。


『近いな』
渡「いつもこんくらい近いじゃん」
『…お風呂入れば？』
渡「くさい？」
『翔太じゃない匂いする』


お前俺の匂い知ってんの、ってちょっと一瞬嬉しくなったけど一緒に住んでんだから当たり前かってすぐ冷静になった。


渡「うーん…」
『なぁに』


ホテルでシャワーも浴びてるし酔いなんてほとんど冷めてるはずなのになんでだろ、この2人きりって空間と距離とあとテレビで流れてる映画がなんか勝手にムーディーな空気にさせてきて、ソファにひじをついて頭を悩ませた。



渡「…お前彼氏とどんぐらい付き合ってた？」
『えー…4年？』
渡「ながっ」
『声でか』


別に彼女はいらない。ほしくもない。


でも、


ｸﾞﾘｸﾞﾘｯ


『うわっ、最悪っ…』
渡「…んふふ」


今はなんとなく君の気を引きたくなって、Aの肩におでこを擦り付けてみた。


『わんこか……もー…』
渡「トイプー？」
『おこがましいわ。てかなんで見知らぬ女の子の匂いを女に付けるかなぁー』
渡「風呂一緒に入る？」
『入らない』
渡「いいじゃん」
『さっさと風呂入れ』
渡「んははははっ」


めちゃめちゃ嫌そうに肩の匂いを嗅ぐのも


渡「ねぇ俺が風呂から出てきたらさ、ラーメン食いたくない？」
『…それは食べたすぎちゃうな』
渡「だろ？」


2人で食べたらゼロカロリーだもんねとか言ってんのも


『お風呂サッといってパッと出てこい、お鍋の準備はしといたげる』
渡「おっけ」


ぜんぶ面白くて、心地良い。

…今はそれだけでいい。

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