キミガシネ？...嫌に決まってんじゃん。2

伍壱 ページ9

静かな、時間だった。
誰もが人形が完成していく様子を、ただ黙って見つめる。

この人形が完成したら、一体何が起こるのだろうか。


不安と、好奇心が、俺の心の中で混ざり合う。

ケイジさんが、人形の頭をのせる。
人形が、完成した。




1秒、5秒、10秒.....


何も、起こらないのか？

そう思った瞬間、おかしな匂いが鼻を掠めた。


やばい。


何がやばいかまでは自分でもよくわからなかったが、その匂いは、俺の不安を掻き立てるには十分で。

鼓動が早まる。

変な汗が額から流れる。

必死に自分に言い聞かせる。

落ち着け、落ち着け、落ち着け。

ジョー「なぁ、周りが白くなってきてないか？！」

ケイジ「ガスだ...！」

誰かの、息を飲む音が聞こえた気がした。

ピリッと空気が張り詰め、緊張が走る。


咄嗟に袖元で口を抑え、ドアの方を見た。

白いモヤでよく見えなかったけれど、でも、確かに開いていたことは確認できる。

密閉されてるわけじゃない。空気の流れを、どうにか外に.....



ガタッ




それは、わずかな物音だったかもしれない。

けれど、確かに聞こえた。金属の擦れる音と、何かの物音。

なんの、音だ？

ただの、物音でしかない。
誰かの靴音かもしれない。

そのはずなのに、何故か、妙に引っかかる。


思わず音のした方に視線を向ける。

その瞬間だった。


？「皆さん、毒ガスじゃないので安心してくださいね。」


その方向から、声がした。
段々と煙がはれ、白かった視界にきついピンクが戻ってくる。


全ての煙が晴れた時、”彼女”は、目の前にいた。


？「あはは、初めまして。」

そう言って、声の主は笑う。

ジョー「はぁ！？お前....人形じゃないか！」




”彼女”は、俺らが集めた、人形の姿そのものだった。

？「ふふふ、あなた方が今救ってくださった人形です。高性能でしょう？」

にわかには、信じ難い。
確かに、さっきまで見ていた人形そのものに見える。



『....っ？』

ふと、人形の後ろに、通気口のようなものがあるのが見えた。

ハートの格子で塞がれてはいるが、ただの通気孔にしては、サイズが大きい。

そこで、はっと、さっきの音を思いだす。

その瞬間、俺の頭に1つの仮説が浮かぶ。

その仮説によって、思考は幾分か冷静さを取り戻し、俺は人形をもう一度、今度はよく観察した。

....あの肌の感じ。

近くで見たからこそ、わかる。


.......こいつは、おそらく、人間だ。

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