六七 ページ26
織「は?」
『俺、今日家に誰もいないから、せっかくだし外で飯食おーかなって思って山田誘ってたんだけど、あいつはあいつで多分忙しいだろうなってちょっと罪悪感あったんだよ。
ってことでカラオケ行こーぜ。』
織「えっ、あっ、ちょっ!?」
半ば強引に九重の腕を掴んで、俺の予定につきあわす。
自己中だと思ってた。
人を見下してると思ってた。
だけど、家族の事を話すアイツの顔が、泣くのも困ってる奴を見ないふりするような自分も"嫌い"だというアイツの顔が、妙に苦しそうで、憎ましそうで、辛そうで、
俺が思っているような奴じゃないのかもしれないと、
本当はもっと、何かを背負ってるんじゃないかと、
アイツを知りたいと、初めて思った日だった。
_______________
『…アイツさ、自分が傷つくよりも、他人が傷つくことの方が嫌いなんだよ。
ほんと、どうしようもなく、他人の助けて欲しいって気持ちに、敏感なんだよ。』
ぐっと、拳に力が入った。
誰よりもお節介で、助けて欲しいって気持ちに、悲しいくらい敏感で、それで、その事を、きっと、その手が届かなかったことを誰よりも気にしてしまう、九重織という、1人の女子高校生。
部屋に戻ってきたあいつの笑みが、忘れられなかった。
理由は、分からない。投票の真相だって、何も。
だけど、アイツが悪意あって自分以外に投票したのではないことだけは、絶対だと断言できる。
悪意あって投票したなら、あんな笑顔、作るわけがない。他の誰もわからなくても、1番長く一緒にいる俺は、わかる。…わかってしまう。あの作り笑顔。
あの笑顔の下にあるだろう後悔を想像しただけで、あいつが今、どんな気持ちかを考えただけで、俺の心が苦しくて仕方がなくなる。
もし、俺が、ミシマさんを救えていたら。ドアの後ろの張り紙に気づけていれば。首輪を鳴らされ罵倒を浴びせられたアイツを庇うことが出来ていたら。
あんな、あんな笑顔など、作らせることにはならなかったんじゃないか。
あいつの辛さを、少しでも消すことが出来たんじゃないかと。
動けなかった自分に腹が立つ。
届かなかった自分に腹が立つ。
アイツに何もしてやれていない自分に、どうしようもなく、腹が立つ。
『…すぐに、とは、言わねーけどさ。
アイツの事、信じてほしい。』
ジョーとサラの目を、真っ直ぐに見つめ、俺は2人にそう告げた。
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クライヤ(プロフ) - なかねこさん» こちらこそありがとうございます!!!! (2021年10月31日 23時) (レス) id: 8a85863d1f (このIDを非表示/違反報告)
クライヤ(プロフ) - アズライト@pitterさん» ありがとうございます!!! (2021年10月31日 23時) (レス) id: 8a85863d1f (このIDを非表示/違反報告)
なかねこ - うっわずーーーっとニヤニヤしながら読んじゃったありがとうございました。 (2021年10月24日 12時) (レス) @page43 id: c7c3a69365 (このIDを非表示/違反報告)
アズライト@pitter(プロフ) - まぁ確かに嫌に決まっとるわな…w応援してます!w (2021年9月7日 10時) (レス) id: c4b69809d7 (このIDを非表示/違反報告)
クライヤ(プロフ) - レイさん» えっへん!! (2021年8月11日 21時) (レス) id: 8a85863d1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クライヤ | 作成日時:2021年1月31日 7時