よんごーろく ページ6
タイマーの残り時間は、まだ十分にあった。
２１歳の俺がこの先生きられる時間は、十分にあった。
…しかし俺は。
握りしめていたそれを。
つなぎとめていたそれらを。
何のためらいもなく、すべて手放した。
吊るされていたろうそくが、すべて床に落ちる。
その瞬間、炎はすぐに部屋に燃え広がり、いますぐにでも俺を飲み込もうとする。
そんな炎を、すべてをあきらめた瞳に映しながら。
恐怖心も後悔も、何もこみ上げてない薄情な自分を、自分の人生を鼻で笑いながら。
俺は、命を捨てた。
――――――――――――――――――
キサラギ「……………おわっ、た。か。」
何分たっただろうか。
やっと、電流が止まる。
ランマル「や………やった！止まったんだな！」
どうやら、結果は成功におさまったようだ。
・・・。
自分の手を、ぐーぱーと動かす。
電流に耐えている間、俺は自分の最期の瞬間を思い出していた。
・・・もし、あの時、今みたいにあきらめず耐えていたら。
おれはここに、生きた人間として立っていたのだろうか。
ランマル「みんな…」
プラプラと手を回していると、弱々しい彼の声が、鼓膜に届いた。
見れば、ランマルは眉を下げ、申し訳なさそうに俯いている。
ランマル「…本当にすまねえ……俺は……」
事情を把握しきれているわけじゃない。
しかし、彼がどう言う人間なのかは、理解しているつもりだ。
期間は短くとも、大事な俺の仲間なのだから。
キサラギ「…ランマル。言う言葉、ちゃうんやないの？」
ランマル「っ…!………そ、その…………
…………みんな、ありがと、な。」
レコ「へへっ、良かったな。」
サラ「ランマル……」
ランマル「…!
えっとさ、サラ…
サラの……為なら…その…」
ん？んんん？ちょい待て、なんやなんやその展開。
まじで何があったんおふたりさん。
キサラギ「…というか、ああいうとこ見習いいやソウ。」
ソウ「五月蝿い。」
ヒナコ「そうだ…それより早くここを出て…!
エレベーター、動き始めたの…!」
なおも軽口を叩きあっていた俺たちは、
その言葉に、思わず、会話も忘れ、
そして、ばっと、顔を見合せた。
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作者名：ｸﾗｲﾔ | 作成日時：2023年11月2日 22時
