よんごーご ページ5
”今握っているロープすべてが、ろうそくの燭台につながっています。
手からロープが離れた場合、それにつながれていたろうそくが床に落ちます。
制限時間の後、貴方が燃やされずに生きていれば試練はクリアです。その拘束具もはずれ、後ろのドアから外へ出ることができます。”
訳もわからず、握りしめているロープ。
鎖でつながれた足。
”最初の試練”と称され説明された目の前の状況をのみこめないまま、それはスタートした。
条件反射のようにロープを握りしめると、目の前のタイマーがスタートする。
かなりの数が吊るされているろうそく。もちろん、手にかかる負荷も大きかった。
最初こそ耐えられたものの、だんだん手の力も弱まっていき、そしてついに、一つのロープが俺の手をすり抜けて離れる。
ことん、と吊るされていた１本のろうそくが床に落ちた。
ぼぉっ…と、その個所から炎が上がり、徐々に広がっていく。
一本だけならここまで燃え広がることはないだろうが、何本も落としてしまえば、部屋全体に燃え広がることは容易に推測できた。
一本。
また、一本。
俺の手から、縄がすり抜ける。
燃え広がる炎。
だんだん呼吸が苦しくなり、額から汗が流れる。
＿熱い。
＿苦しい。
「キサラギ君といても、楽しくないんだよね。」
ふと、前に付き合っていた女の子の言葉を思い出した。
「はぁ…貴方にはがっかりだわ。」
次に、母親。
「お前のそういうところ、うぜえんだよな。」
次に、友人。
ロープが一本離れていく度、俺から離れていった人たちのことを思い出す。
・・・おれ、何のために、このロープを握ってんだ？
こんな苦しい思いしてまで、耐えてまで。どうしてつかもうとしてるんだ？
こんな縄を必死に握って耐えていたって、苦しいだけなのに。
こんなつながりを必死につなぎとめて生きていたって、誰も俺に見向きもしないのに。
・・・こんなことして、いったい、何の意味があるねん。
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作者名：ｸﾗｲﾔ | 作成日時：2023年11月2日 22時
