〈remake〉キミガシネ？嫌に決まっとるやん。１０ (ページ23)

今日:30 hit、昨日:32 hit、合計:4,616 hit

よんななさんページ23

ソウ「ん？なんか言った？」

キサラギ「えー？お前らあほやなぁなんて言うてへんよ？」

『おうおう、戦う？戦っちゃう？言っとくけど二対一だよ？』

おうやるか？なんて言いながら、キサラギはにやりと笑ってファイティングポーズをとって見せる。オリもにやっと笑ってファイティングポーズをとれば、２人仲良くソウの拳骨を食らった。

『・・・あ。』

ふと。

耳に、透き通るような歌声が届く。

今までの緊張を拭うような、これまでの残虐な経験を慰めるような、そんな綺麗で優しい歌声に、自然と３人の心が安らぐ。

見てみれば、レコ達が歌っていた。

今まで見てきた中で、いちばんやさしい表情で彼女たちは歌っていた。
…思えば、このデスゲームが始まってから、こんなにも心安らぐ時間があっただろうか。

穏やかな表情で聞いているクルマダも、楽しそうに歌っているアンズも…ダミーズ達も。
キサラギと、同じようなことを思っているのかもしれない。

小さくハミングするキサラギ。
歌いはしないが、穏やかな表情で歌うみんなの方を眺めるソウ。

そんな二人の、背中を見るオリ。

『・・・。』

彼女は、静かに、瞼を閉じる。

こぶしを受け止められた時。

この、冷たい手に気づかれてしまうのではないかと思った。

どくどくと速い心臓も、頭を埋め尽くす緊張も、ばれてしまわないか心配だった。

・・・また無理をして、と、怒られるだろうか。

脳裏にソウの顔が浮かぶ。

でも、自分をないがしろにしているわけじゃない。
今までのような、自己保身のための自己犠牲とは、全く別物だ。

・・・やろう。自分にやれる、精いっぱいを。

ゆっくりと、瞼を開く。

下を向く暇はない。

彼女のまっすぐな赤い瞳は、ただひたすら、前を向いていた。