よんななに ページ22
やっぱ仲良しじゃん、とオリは思いつつ、それを彼に言ったら余計に眉間のしわが濃くなることも知っている。だから、のどのすぐそこまで出かかった言葉を飲み込んで、代わりに「んふふふふふ」と生暖かい視線を向けかわいげのない笑いをこぼした。
キサラギ「なんやその顔。女子力ないなぁ。」
ソウ「わかってないなキサラギ。オリに女子力があるわけないだろ。」
『ふっざけんな世の中の女が全員かわいい笑い方しかしないと思うなよ？』
キサラギ「少なくとも普通の女子はそう言いながらファイティングポーズはとらへんねん。」
オリは、しゅしゅしゅっといいながら、シャドーボクシングをして見せる。
そんな彼女にまたケラケラと笑うキサラギの横でソウもふっと呆れたように笑うと、キサラギの腕をやんわりとほどき、正面からオリの両こぶしをぽすんぽすんと受け止めた。
ソウ「ほらほら、休憩時間でーす。」
ソウは、受けたオリの手をにぎったままいつかのようにぶらぶらと揺らす。
自分の拳を受け止められてしまったオリは、はぁいと間延びした返事を返しされるがままにうでをぶらぶらと揺らした。
キサラギ「…。」
『ん？なんですかその何か言いたげな目は。』
キサラギ「いや、お前ら・・・
・・・・・・・・うん、いや、何でもないわ。」
ソウ「はぁ？」
お互いの気持ちは言わんくせに、距離感はぶっ壊れてるんやな。
と、空気の読める男キサラギは出かかった言葉を心の奥底に何とかしまい込んだ。
キサラギ「最後の休憩、か。」
最後の休憩、ということは。
お互いの手を握り何かを話してはたまに笑いあう二人を眺めながら、キサラギは一人、思考を巡らせる。
彼らとこうやってふざけ合えるのも、これで最後ということだ。
死ぬことは、怖くないと思っていた。実際、死ぬとき怖いと思わなかった。
自分の命に執着しなかった。自分の将来に、明日に、家族に、友人に、誰にも、何にも。執着などしなかった。
・・・執着など、しなかったのに。
キサラギ「あーあ…時間、止まってくれへんかなぁ。」
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作者名：ｸﾗｲﾔ | 作成日時：2023年11月2日 22時
