よんろくきゅう ページ19
が、それは一瞬のことで、オリは再びディスプレイに近づき、そのディスプレイめがけて蹴りを入れた。
ユキヤAi「オリ、」
ユキヤの声で、オリの名を呼ぶ。
『ユキヤは私を守ってくれるのにね。』
他のディスプレイからの攻撃を避け、そして再びユキヤのディスプレイに近づく。
『…ありがとね、こんなひどい奴、好きになってくれて。』
ユキヤAI「・・・
・・・・そんなお前だから、好きになったんだろうが。」
『…ははは、やりづらいこと言うなよもー。』
ユキヤAI「本心だ。…ま、本物の俺じゃないから、本心って言っていいのかわからないけど。」
『じゃあ、好きじゃないってこと？』
ユキヤAI「それは、ないな。俺はお前が好きだ。」
『さらっというなよ恥ずかしいな。』
ディスプレイにふれるオリ。
もう片方の手をポケットに突っ込み、そこからあるものを取り出す。
『…ごめん。』
ユキヤAI「…幸せになってくれれば、それでいーよ。」
『…そっか。ありがとう。』
そんな短い言葉を交わした後。
オリは、手元にあったUSBメモリを、そのディスプレイに刺した。
ユキヤAI「・・・頑張れよ。」
ぷつん、と、ディスプレイが消える。
それと同時にメイプルは苦しそうに呻き、すべてのディスプレイの画面が消えた。
ミドリ「…オリ。それ、」
『…もらった。』
ミドリ「・・・うそだ、そんなはずは」
『ねぇヒヨリさん。』
オリは、ミドリに視線を向ける。
『あなたも、私と、一緒なんじゃないですか？』
ミドリ「・・・・・・・・。」
ミドリが何か言おうとした、その時。
メイプル「……メガ、サメタ……………」
メイプルがディスプレイを引きずりながら、ミドリのもとへと歩いてきた。
おぼつかない足取りで、彼女は緑の目前に迫る。
自分とミドリの間に入ってきた彼女を、オリは止めることなく静観している。
メイプルは、その震える手を、ミドリに伸ばし、口を開いた。
メイプル「……………ネエ、ヒヨリくん。
・・・イッショニシノウ？」
ミドリ「…………
………………
……………はぁ？」
今までずっと涼しい顔をしていたミドリ。
その顔が今、
崩れた。
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作者名：ｸﾗｲﾔ | 作成日時：2023年11月2日 22時
