人生とこだわり ページ12
相原美久の朝は早い。この日は雨が降っているためランニングは出来ないが、柔軟体操をして体をほぐしている。
「ぐにに…ふぅ…」
「おはよう、美久。って、もう支度終えてるし…ちゃんと寝てるの?」
予科委員長杉本紗和が起きたのは4時半で、これでも予科生の中では十分に早いのだが。
「あ、紗和ちゃんおはよう。ちゃんと寝てるよ。最近4時起きに慣れてきたんだ」
「そう。初めて会った時から、ずっとそんな感じよね」
「まあ、練習とか勉強してないと落ち着かない習慣ってやつかも」
「児童劇団時代からの癖ですか?」
「なの、かな?演じるのも勿論好きなんだけど、演出とかも昔から興味あってね」
「演出も、ですか」
意外なことを知り、紗和は驚いた。
「うん。舞台ってさ、芝居だけか全部じゃないんだよね。紅華ならではの分かりやすい例えだとボートデートのシーンあるとするでしょ?予算がどれくらいあるか分からないけど、床をプロジェクトマッピング利用して水面を再現すれば、ボートが傾くときのよろける演技もよりそれっぽく見えるとか。あと、紅華だと縁が無さそうだけど、野外でやるなら匂いを活かしたアドリブとか芝居のテーマにしたりとかね」
「なるほど…どちらの例え話も面白いですね。紅華とバレエの魅せる演技ばかりに気を取られてたような気がします。視野が広がったわ」
「実際に舞台に上がってる利点かもね」
「美久、そろそろ時間になるわよ」
「あ、ほんとだ!」
私は、立ち上がって着崩れた制服を整える。
(美久の、紅華への愛がどれほどのものかはまだ分からないけど、芝居へのあの熱意、凄い…。あれほどの知識を持ったうえでの演技力なら、委員長の自分を置いて特待生になるのも納得ね。まだまだ知らないこともたくさんあるわね)
紗和はそんな私を眺めていた。何を思っていたのかは私は知る由も無い。
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作者名:アルテミリア | 作成日時:2021年9月15日 9時