検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:3,004 hit

20話【灰ヶ峰零】 ページ20

「失礼するよ」

静かにドアを開け、「メイデン相談所」に入る。
そのまま勧められた椅子に座り、どちらも何も言わない空気に少し気まずくなる。
そのまま何もできないでいると、Aliceがゆっくりと口を開いた。

「で、どうしてルルチアはあんな状態に?」

単刀直入にそういわれて、どういったらいいのか分からず目線をそらす。
魔物のことを言って大丈夫だろうか。
だがきっとルルチアは魔物のことを仲間に言うだろう。広まるのはもう時間の問題だ。

「……魔物」

「え?」

かすれた声が出て、少し聞こえづらかったのか聞き返される。
もう、すべて言ってしまおう。このままうじうじ悩むのも面倒くさいし、それより私の頭はほとんど働いていない。
とにかく今はさっさと寝てしまってリセットしてしまいたかった。
今日すべての出来事も。もう、こんな不運な日は嫌だった。
軽く息を吸い込む。

「長くなるけど、今日、ある魔物に出会って……」






「そんなことが……」

全ての事を言い終わり、溜息をつく。ずっと話していたせいか、のどがかわいて少し痛い。
Aliceは少し驚いたような顔をして、腕を組む。

「やっぱり、私があんなことを言わなければ……」

ずっと思っていたことを口に出すとさらに実感がわいて、どうしても嫌な感情が湧いてくる。
私が口にしなければ、ルルチアも私もつらい気持ちにはならなかったはずだ。

「いや、零のせいではないよ」

きっぱりとそういわれるが、それでも負の感情は湧いてくる。
きっとAliceは私のことを気遣って言っているだけだ。そんなことはわかっている。

「ごめん……私が、言わなければルルチアが倒れることもなかったし、皆に迷惑をかけることもなかった……」

少しAliceの顔を見ながら言うと、どこか困ったように首を傾げた。

「お前は悪くないって言ってんだろうがよぉ!!」

途端に怒った顔をして、叫ばれる。マリアが出てきたのだろう。思わず下を向く私を気にせず、マリアは私を怒り散らす。

うすうす分かっていた。これは、私だけが悪いわけではない。

いや、違う。これは私が悪いんだ。私だけが、悪い問題だ。私がいけなかったのだ。

「おい、聞いてんのか!?」

さっきより大きな声で言いながら、机を強く叩くマリアに、身を竦める。
わかっているんだ。私が悪いのだ。

「私が、悪いから……」


「だから、聞いてねぇだろ!!」

もう一度ばん、と机を叩かれる。
それにつられて、思わず私は立ち上がり叫んだ。

「私が悪いんだよ! 」

21話【灰ヶ峰零】→←19話【ルルチア=ロッキ】《友達×家族》



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (6 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
5人がお気に入り
オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

緋雨(プロフ) - 更新しました (2019年1月27日 19時) (レス) id: a99e3f0dd3 (このIDを非表示/違反報告)
緋雨(プロフ) - 更新します。 (2019年1月27日 19時) (レス) id: a99e3f0dd3 (このIDを非表示/違反報告)
八彩(プロフ) - 終わりました。 (2019年1月12日 20時) (レス) id: 6f8b3d2233 (このIDを非表示/違反報告)
八彩(プロフ) - 更新します。 (2019年1月12日 19時) (レス) id: 6f8b3d2233 (このIDを非表示/違反報告)
花梨(プロフ) - 終わりました (2019年1月11日 22時) (レス) id: 0f72c4ac28 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:アーレス(八彩・ユリ夜桜) x他3人 | 作成日時:2018年9月15日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。