20話【灰ヶ峰零】 ページ20
「失礼するよ」
静かにドアを開け、「メイデン相談所」に入る。
そのまま勧められた椅子に座り、どちらも何も言わない空気に少し気まずくなる。
そのまま何もできないでいると、Aliceがゆっくりと口を開いた。
「で、どうしてルルチアはあんな状態に?」
単刀直入にそういわれて、どういったらいいのか分からず目線をそらす。
魔物のことを言って大丈夫だろうか。
だがきっとルルチアは魔物のことを仲間に言うだろう。広まるのはもう時間の問題だ。
「……魔物」
「え?」
かすれた声が出て、少し聞こえづらかったのか聞き返される。
もう、すべて言ってしまおう。このままうじうじ悩むのも面倒くさいし、それより私の頭はほとんど働いていない。
とにかく今はさっさと寝てしまってリセットしてしまいたかった。
今日すべての出来事も。もう、こんな不運な日は嫌だった。
軽く息を吸い込む。
「長くなるけど、今日、ある魔物に出会って……」
「そんなことが……」
全ての事を言い終わり、溜息をつく。ずっと話していたせいか、のどがかわいて少し痛い。
Aliceは少し驚いたような顔をして、腕を組む。
「やっぱり、私があんなことを言わなければ……」
ずっと思っていたことを口に出すとさらに実感がわいて、どうしても嫌な感情が湧いてくる。
私が口にしなければ、ルルチアも私もつらい気持ちにはならなかったはずだ。
「いや、零のせいではないよ」
きっぱりとそういわれるが、それでも負の感情は湧いてくる。
きっとAliceは私のことを気遣って言っているだけだ。そんなことはわかっている。
「ごめん……私が、言わなければルルチアが倒れることもなかったし、皆に迷惑をかけることもなかった……」
少しAliceの顔を見ながら言うと、どこか困ったように首を傾げた。
「お前は悪くないって言ってんだろうがよぉ!!」
途端に怒った顔をして、叫ばれる。マリアが出てきたのだろう。思わず下を向く私を気にせず、マリアは私を怒り散らす。
うすうす分かっていた。これは、私だけが悪いわけではない。
いや、違う。これは私が悪いんだ。私だけが、悪い問題だ。私がいけなかったのだ。
「おい、聞いてんのか!?」
さっきより大きな声で言いながら、机を強く叩くマリアに、身を竦める。
わかっているんだ。私が悪いのだ。
「私が、悪いから……」
「だから、聞いてねぇだろ!!」
もう一度ばん、と机を叩かれる。
それにつられて、思わず私は立ち上がり叫んだ。
「私が悪いんだよ! 」
21話【灰ヶ峰零】→←19話【ルルチア=ロッキ】《友達×家族》
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緋雨(プロフ) - 更新しました (2019年1月27日 19時) (レス) id: a99e3f0dd3 (このIDを非表示/違反報告)
緋雨(プロフ) - 更新します。 (2019年1月27日 19時) (レス) id: a99e3f0dd3 (このIDを非表示/違反報告)
八彩(プロフ) - 終わりました。 (2019年1月12日 20時) (レス) id: 6f8b3d2233 (このIDを非表示/違反報告)
八彩(プロフ) - 更新します。 (2019年1月12日 19時) (レス) id: 6f8b3d2233 (このIDを非表示/違反報告)
花梨(プロフ) - 終わりました (2019年1月11日 22時) (レス) id: 0f72c4ac28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アーレス(八彩・ユリ夜桜) x他3人 | 作成日時:2018年9月15日 13時