橄欖の側にて咲く青薔薇の密かな望み。そのキュウ (ページ9)

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ヨンヒャクイチ話　第三者視点ページ9

ふうと一つ溜め息を吐いたジャンヌは困ったように笑ったあとに頷いた。

「『わかりました。ですが、必ずAの前に貴方の姿で現れてくださいね』」
「努力するさ」
「『約束ですからね？』」
「わかったわかった」
「『嘘を吐いたら針千本ですので、気をつけ──』」

そう言いかけたジャンヌは言葉を止めると庭の方を見た。

気配が一つ、近付いてきている。

それはおそらく、いや絶対にセイバーだろう。

「『そろそろ出られた方がいいですよ、アサシン』」
「おやまぁ、誰か戻ってきたのか。残念」
「『私としてはこのまま居座っていただいても全然問題ありませんが』」
「それは勘弁なんでね。そろそろ行くかぁ……」

よいしょっと腰を上げるアサシンは一瞬で姿を大河からディルムッドにへと変貌する。

大きく伸びをし、それから見上げてくるジャンヌを見た。

ディルムッド本人ならば浮かべないような無邪気な笑みを浮かべたアサシンは座るジャンヌの耳元まで屈むとそっと囁く。

「今度は俺だと気付けるといいねぇ、A？」

そう言ったアサシンはジャンヌの、Aの耳へとキスを一つ落として離れていった。

「じゃあまたな、聖女様。Aには俺のことを言っても言わなくてもどっちでもいいから」
「『……お気を付けて』」

リビングから出て行くアサシンの後ろ姿に、ジャンヌは座ったまま見送った。

小さくガラガラと玄関の引き戸が開いて閉じる音が聞こえたあと、あえジャンヌにわかるように少しだけ足音を漏らして敷地内から出て行ったアサシン。

約二分後、庭の方からセイバーが一人現れた。

大河が見つからなかったセイバーはガラス戸越しにリビングを見るがジャンヌしか居ないため一度目を瞬き、中を確認するように視線を動かしたあと少し不思議そうな雰囲気を出したのち、玄関の方へと回っていった。

本日三度目となり玄関の開閉音が聞こえ、少ししてからリビングへ戻ったセイバーはジャンヌに一人かと尋ねる。

「『どうしてそう思われたのですか？』」
「話し声が僅かに聞こえたので。てっきり花を摘みに行くと言った大河か、買い出しに行ったランサーが戻ったのだと思ったのです」
「『まだお二人は戻っておりませんよ』」
「……では、いったい誰と話をしていたのですか？」

その問いにジャンヌは困ったように笑った。

そして、口開く。

「『ただの心配屋さんとですよ』」