橄欖の側にて咲く青薔薇の密かな望み。そのキュウ (ページ22)

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ヨンヒャクジュウヨン話ページ22

と、少し考えていればウェイバーさんにそろそろ搭乗口に行かないといけないと言われたため、リンちゃんを見るとにっこりと素敵な笑みをいただいた。

かわいらしくて綺麗な笑顔なのに、どうしてこんなにも恐ろしく感じてしまうのだろう。

「先日私がお渡ししたロード・エルメロイ宛ての手紙、ちゃんと貴女から渡してよね」
「はい、もちろん。兄様にお渡しするようにします」
「ならいいわ。じゃあ、よい旅を」

そのまま片手を上げてにっこり、じゃない。

あれはきっと擬音で表すのならにんまりが近い。

リンちゃんはにんまりと笑うと一歩下がった。

「A」
「あ、はい。では皆さん、英国に来る時は是非私を尋ねてきてください。観光ガイド……はできないかもしれませんが、それでも精一杯皆さんを楽しませようと努力いたしますので」

各々反応してくれる。

ランサーとセイバーにまた再戦の約束を言って、握手をしていた。

次も日本に来るときはランサーと一緒に来なければならないため、兄にお願いしてランサーの戸籍を作ってもらうのもいいかもしれない。

おそらくソラウさんも賛成してくださるだろうけど、ソラウさんに相談するのは最終手段にしたい。

折角夫婦円満まではいかなくても夫婦としてのあり方をとっているのだから。

「A。そろそろ向かわないと本当に乗り遅れる」
「！わかりました」

もう一度ウェイバーさんに名前を呼ばれたので搭乗口へと向かおうとすればタイガの声が背中にかかる。

「A」
「！」
「またおいで！」
「……はい、もちろんです」

振り返ると、私が食べていたクレープと同じものを持っていたので思わず笑ってしまった。

私が予想するに、きっと私が食べている姿を見て食べたかったのだと思う。

手を振るタイガに私も返し、今度こそ搭乗口へと足を進めるのだけどアナウンスが流れる。

それは私とウェイバーさんとランサーの呼び出し。

『──搭乗時刻五分前です。至急搭乗口まで来てください』

「……」
「……走るぞ」
「背負いましょうかA様」
「自分で走りますッ」

ランサーはそのままだけど、ウェイバーさんも私も魔術を使って身体能力をあげないと到底間に合わない。

魔力を両脚に流し、走り始めたウェイバーさんの後ろを私も走って追い掛けた。

遅れて私の後を走るランサーは、おそらくいつでも私を抱えて走られるようにしてるみたいだけど今回は不要、だと思う。