橄欖の側にて咲く青薔薇の密かな望み。そのキュウ (ページ18)

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ヨンヒャクジュウ話ページ18

搭乗手続きをしてくるというウェイバーさんを見送って、私とランサーは休憩用に付けられている椅子に座ってウェイバーさんの帰りを待っていたのだけど。

「！」
「？どうかされましたか、A様」

人々の間に確かに見えた。

じっと私を見ているアサシンの姿を。

「……」

私が気付いたことに気付いたアサシンは悪戯っ子のように笑うと踵(きびす)を返して人混みに紛れていく。

「っ待って！」
「A様!?」

思わず駆け出す。

背中にランサーの制止の声が聞こえてきたけど、心の中で謝りながらもそのままアサシンの影を追う。

でも、丁度飛行機から降りてきたらしい、旅客達のお陰でアサシンの元へとなかなか向かえない。

人との間をするするとすり抜けていくアサシンとは違って、通してと声を上げながら人の間をどうにか抜けていくため、どんどんアサシンとの距離は離れてしまう。

「待ってください、アサシンっ」

私の制止の声を聞こえていないのか、あえて聞こえない振りをしているのか。

きっと後者だと思う。

だけど、一度私に振り返った彼は笑い、そして完全に私の前から姿をくらましてしまった。

周囲を見渡してもアサシンの姿は見えない。

おそらく彼のスキルであるドッペルゲンガーを使って誰かの姿になっているのかもしれない。

そうすると私に見破る手段がなく、いわゆる詰みというものになってしまう。

大人しく元の場所へと戻ろうと身体を反対に向けた瞬間のことだった。

ぷにっと頬にあたる何か。

見るとそれは指であり、指から手、手から腕と続いて顔を見ればしたり顔のタイガが。

「ふっふー、引っ掛かったわね、A」
「……タイガ」
「？どうかした？なんだか浮かない顔をしてるけど……」
「……いいえ、なんでもありませんよ」

心配そうにしているタイガに首を横に振って、それから彼女の背後側からこちらに歩み寄ってきているシロウ君達を見て、タイガを見て、なんでもないことをもう一度告げた。

「……。そっか、じゃあ聞かないであげる」
「ありがとう、ございますタイガ」
「まぁ私はAの友達だからね。それにお姉さんだしぃ？」
「私の方がお姉さんです」

えっへんと胸を張るタイガに年齢的には私の方がと言えば、否定されてしまった。

「Aは妹属性だもの。私の方が姉属性」
「……その、妹属性ってなんなのでしょうか？」
「そういうところ」

どういうところ？

尋ねてみるけどタイガは教えてはくれなかった。