橄欖の側にて咲く青薔薇の密かな望み。そのゴ

ニヒャクニジュウイチ話 ページ26

逃げ切れたらしいアサシンが向かった場所はシロウ君の家だった。

夜中らしく、人が活動する音は聞こえない。

「Aさん、御無事でよかった」
「ありがとう、ございます。シロウ君も御無事そうで」

にこりと笑うけど、きっと笑えていないだろう。

少し心配するシロウ君に気にしないでと返せばリビング──居間へと案内されて。

日本らしいコップに入ったお茶を飲みながら、机を囲んで今までのことを報告し合うことになったのだけど。

「どうして第五次のランサーがいるのですか？ それにリンちゃんは？」

シロウ君とセイバーの隣、私とアサシンの隣。

所謂お誕生日席と呼ばれる辺りに胡座をかいて座るのは今回、ランサークラスにて召喚に応じているアイルランドの英霊。

「あ？ いちゃ悪いのか？」
「そういう訳ではありません。ただ、どうしてシロウ君の家にいるのかと思って……」

事情を知っていそうなアサシンを見てからシロウ君とセイバーを見れば、ここ数日の出来事を話してくれた。

「ランサーは彼のマスターからの指示で俺達に力を貸してくれているんです。」
「バゼットさんから？」

目を剥いて第五次のランサーを見れば、第五次のランサーも私を見ていた。

まるで何かを訴えるかのように、私を見る第五次のランサーにどうかしたのかと問おうと口を開いた時。

「知り合いなのですか、Aさん」

シロウ君が尋ねてきた。

「知り合いとまではいかないのですが、時計塔で少し話しただけなのです」

視線をシロウ君を見て、もう一度第五次のランサーを見たのだけど相変わらずの目であった。

どうしてそのような目をしているのだろう。

「じゃあAさんの顔見知りだから俺達に手を貸してくれたのですね」
「……」
「Aさん？」
「いえ。あと、リンちゃんはどうされたのですか？ 姿が見えないようなのですが……」

変わらず黙ったままの第五次ランサーを気にしつつ、できるだけ先程の彼の声を思い出さないようにするため先程から赤い服が似合う彼女の姿が何処にもいないことに対しての疑問を、再度ぶつけた。

リンちゃんはシロウ君を気にされていたようだから、絶対にシロウ君の側にいると思っていたのだけどどうしていないのだろう。

「アーチャーに、攫われた」
「！」

どういう、こと？

「士郎。先にお互い状況の説明をし合ってからのリンが攫われた理由を話す方が分かりやすいかと……」
「そう、だな。わかった」

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