橄欖の側にて咲く青薔薇の密かな望み。そのゴ

ニヒャクジュウロク話　第三者視点 ページ21

一進一退の攻防。

既に戦い始めて幾分経過しているのだろうか。

人である、元マスター達二人は疲れを見せ始めていた。

このまま戦い続ければ再び敗北を期してしまうだろう。

となれば、出し惜しみしている場合ではない。

第四次のランサーの後ろ、シスターの格好をしたAを見て、それから念話で軽く謝ると魔力を放出させた。

「奥義、装填！」
「！」

腰を更に落とし、重心を後ろに。

放出する魔力の量により、アサシンが宝具を解放したことは誰が見てもわかることだろう。

第四次のランサーも警戒するように重心を落とし、様子を見る。

真名がまだわかっていない以上、不用意に近付くのは愚策。

魔術的なものであれば右手に握る魔を断つこの赤槍で対処は可能だが、クラスがアサシンであれば身体的なものや生前の行いに由来する宝具を多く持つ。

となれば、左手で握る不治の傷を宿せる黄槍で主に対応すべき。

注意深くアサシンを見ていたのだが重心を後ろから前にずらした瞬間、消えた。

「！」

いや、消えたように見えただけであり、実際は目視では捕らえられることができない程の速度で動いただけ。

何処だと神経を研ぎ澄まして。

「闇の侠客」
「後ろか！」

背後から現れた気配と音に左の黄色い槍を横薙ぎに払うが手応えはなく。

「此処に参上ッ」
「！」

唐突に現れた場所は第四次のランサーの目前。

直後にくる衝撃。

右から左から、後ろから前から。

四方八方からくる打撃に第四次のランサーは反撃のために、その二槍を振るうが一切の手応えはない。

視覚的にアサシンが見えたのは初撃のみ。

残りは残像さえも見えない怒濤の攻め。

どうにか逃れるために槍を振るうが哀しかな、伝わるのはアサシンに当たった感覚ではなく宙を切った感触。

むしろ攻撃の動作をするためにできる一瞬の隙を突くかのように、拳や掌底打ちを打ってくる。

足を打たれ、腕を打たれ、背を打たれ、腹を打たれ、首を打たれ。

まるで一瞬の内に出される打撃の数々に、なす術はない。

「十面埋伏(じゅうめんまいふく)・無影(むえい)の如(ごと)く」

十面埋伏(じゅうめんまいふく)。

それは三国志演義にて曹操軍が撤退する袁紹軍に追撃をするために使った計略。

撤退する袁紹軍を曹操軍の部下二軍が、待ち受け襲いかかるというもの。

切り抜け倒しても、その先に待ち受ける二軍が四組。

合計十軍が立ちはだかり邪魔をするというもの。

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