ニヒャクジュウサン話 第三者視点 ページ18
石畳の上を苛立たし気にキャスターは歩く。
「なんだっていうのあの男ッ！ ただの私の手駒だというのにあの態度ッ！」
感情を表すかのように彼女のヒールが石畳を甲高く叩く。
捕らえられてもなお隙を伺い、獲物の喉元を狙うその様は正しく猟犬と言ってもいい。
気を緩めたら最後。
主人を取り戻すため、その二本の牙を用いて喉を食い破ってくるだろう。
「だから顔が良い男は嫌いなのよッ」
思わず吐き捨てるかのように言葉を吐いたキャスターの後ろにはAが無表情でその背を小走りで追う。
その様子を尻目で見て、少しだけ歩調を穏やかにするキャスターは無意識に親指の爪を噛む。
Aを操っている限りまだ安全でもあり、そして急所に武器を突き付けられている状態でもある。
とんだ拾いものだ、諸刃の剣にもならない。
「……」
ふと、立ち止まったキャスター。
倣うようにAも立ち止まった。
くるりと振り返ったキャスターは、無機質な目で見つめ返してくるAを見下ろした。
徐な動きで自身の宝具を取り出す。
簡単なことじゃないか。
彼女の右手にあるアサシンの令呪を奪い、アサシンを使役する。
そして、使えない第四次のランサーを令呪を使って殺して。
「……」
殺して、彼女も殺せばいい話。
そう、とても簡単なこと。
今自身が持っている刃で彼女の右手首を奪い、彼女の急所に刃を突き立てトドメを刺す。
簡単なことだというのに。
見返してくる彼女の澄んだ瞳を見ていると、手に持つ武器を振り上げることを酷く厭ってしまう。
「……」
深い深い溜め息を吐いたコルキスの王女は宝具を仕舞い、踵を返し歩き出す。
倣うようにAも彼女の後ろを再び歩き始めた。
決して
カツカツと石畳を鳴らして歩くその背を追い掛ける彼女に対して、負の感情ではない何かをその胸に抱いていることは確か。
「……ホント、聞いて呆れるわ」
ぽつりと呟く言葉に石壁に消えていく。
端から回答を求めていた訳ではないため、キャスターも気にする様子もなく歩みを進めた。
目的地は地下の聖堂。
元マスター達を逃がした騎士の少女に更にきつく、身も心もキャスターに捧げるように調教をするため。
気晴らしに、着せ替え人形にでもするのもいいかもしれない。
ならば後ろのAも、その遊びに付き合ってもらおうではないか。
妖しげに口元に弧を描いた魔女は、歩みを進めた。
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翔べないペンギン(プロフ) - 亜流乃さん» コメントありがとうございます。そうなのです。ようやくお互いある種の再開ができましたので。どうにか完結できるように尽力しますのでお付き合いいただけますと幸いです。ジャンヌになるのも気に入っていただけて嬉しいです(照) (2021年3月26日 19時) (
レス) id: 3d75302081 (このIDを非表示/違反報告)
亜流乃(プロフ) - やっとランサーと!!!!!!!!!こういうチュエーション待って ました！ここまで書いて下さりありがとうございます！これからも応援してます！あと、ジャンヌになる展開も好きです(笑) (2021年3月25日 21時) (レス) id: bff6baca0f (このIDを非表示/違反報告)
翔べないペンギン(プロフ) - ありなさん» お待たせしてしまい申し訳ありません。先行きも少々不安ですが持続できるように努めます。コメントありがとうございます。 (2021年3月19日 18時) (レス) id: 3d75302081 (このIDを非表示/違反報告)
ありな - 続編おめでとうございます！凄く嬉しいです！ (2021年3月18日 19時) (レス) id: 0b757b95a3 (このIDを非表示/違反報告)
翔べないペンギン(プロフ) - ロゼファさん» お待たせいたしまして申し訳ありません。持続できるように頑張りますね。コメントありがとうございます。 (2021年3月13日 16時) (レス) id: 3d75302081 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2021年3月12日 1時
