橄欖の側にて咲く青薔薇の密かな望み。そのヨン

ヒャクキュウジュウヨン話　第三者視点 ページ48

拍子抜けする程、廃墟内への潜入は簡単だった。

キャスターが使役する竜牙兵が待ち構えている訳でもなく、第四次のランサーやセイバーがいる訳でもなく。

少しばかり壁や柱に刃物か何かで傷つけられた跡が多数あるくらいで、ただ無人であった。

「誰もいないな……」
「戦力的に向こうが有利なのだから、どうせ余裕かましているのでしょ」

そう小声で言って、更に進む凛だが警戒を怠った様子もなく。

慌てて付いていくように士郎も彼女もその背を追い掛けた。

暗闇が続く廊下は季節も相まって非常に寒い。

吐く息は白いのだが、薄暗いためそのことに気付く者はいないだろう。

廊下ともいえない何かを進むこと幾分か。

先が見えた。

何もない、開けた場所である。

一部崩れている屋根により月光が射すため光源は困らないだろう。

それは向こうも同じであり、クスクスと笑うキャスターの声が木霊する。

「わざわざこんなところまでくるなんて、よっぽどセイバーが大切なのね」

背後を取られないように三人で背中合わせをし、周囲を警戒。

少しすれば月光の差し込んでいる部分に光が集まり、セイバーと葛木を連れたキャスターが現れた。

「セイバー！」
「声を掛けたところで無駄よ、セイバーは私のもの」

目に光を宿さないセイバーは少しだけ士郎を一瞥しただけで何も答えない。

優越感を隠すことなくキャスターは二人の後ろにいる元仲間を見て、愉快そうに口角を上げる。

「あらあら、裏切り者のアサシンのマスターさんもいらっしゃったのね」

彼女は一度凛と士郎に目くらばせをしてから口を開く。

「……ランサーは、何処ですか？」

ランサーの言葉を聞いた途端、キャスターは不機嫌そうに吐き捨てた。

「彼？ とんだ狂犬だったわ。私に牙を剥いてきたから少しばかり痛め付けて、今は鎖に繋いでいるわ」
「ここにはいないのですか？」
「あら？ 会いたいのかしら？」
「答えてキャスター！」

気を逸らすように声を荒げる彼女に、への字口になったキャスターは何かに気付いたらしい。

あなた、と声を漏らしたところだが既に戦いの火蓋は切って落とされていたのだろう。

凛と士郎がキャスターと葛木に対し先制攻撃を仕掛けていた。

「アサシン！ 揺動をお願いします！」

合わせるように彼女もアサシンへ声を掛け、ランサーがいないのなら当初通り凛と共にキャスターの相手をする。

違う点といえば、サポートではなく前衛としてキャスターに挑んでいるところだろう。

ヒャクキュウジュウゴ話　第三者視点→←ヒャクキュウジュウサン話　第三者視点

ラッキーアイテム

鳳凰の羽根

ラッキーカラー

あずきいろ

ラッキー方角

西 - この方角に福があるはずです

ラッキーサーヴァントクラス

シールダー

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す