橄欖の側にて咲く青薔薇の密かな望み。そのサン

ヒャクニジュウイチ話 ページ25

暖かい格好をして、無事に目当の牛乳としばらく分の食材を購入した帰り道のことである。

荷物を持っていただいているアサシンが道の真ん中で警戒するように周囲を見た。

「アサシン？」
「……」

鋭い目で回りを見るため私も視線だけ倣うように見る。

けど視界に映り込むのは朝とはいえ賑わっている商店街。

至って普通の極一般的な日常である。

「どうしたのですかアサシン」
「……サーヴァントがいやがる」
「！」

目を剥く。

そして直ぐに周囲にマスターらしき人物がいないか確認して。

「……え？」

気付いて、見付けてしまった。

「……」

その人物は私が気付いたことがわかったのか、ニヒルに笑うと踵を返して歩いていく。

「っ、待ってください！」

思わず追い掛けようと足を一歩踏み出したけど、右腕をアサシンに掴まれて蹈鞴(たたら)踏んでしまう。

「離してくださいアサシン！」
「いーや、ダメだ」

どうにか離してもらえるように腕を上下に振るけど、アサシンは腕を掴んだまま離さない。

そうこうしている内に、あの人物は何処かへと消えて行ってしまった。

「……行ったか」
「どうして離してくれないのですか！」
「A、もーちょっと声を抑えてくれない？ 周囲の奥様方の視線が俺に突き刺さって突き刺さって、正直ちょっと痛い」
「そのようなことどうでもいいです！」

確かにアサシンの言う通り周囲から視線をもらうけど些細なこと。

むしろ、“彼”を追わせていただけなかったことの方が大問題だ。

アサシンを睨み上げると彼は落ち着けと言うけど私は落ち着いている。

「あのまま追いかけていれば」
「待った待った。A、続きは戻ってから聞くからひとまず此処から離れよう」

な？ と周囲に目線をやりながら私に促すアサシンに抗議をあげるけど、私が言葉を発する前に腕を引いて歩き始めた。

何度かアサシンを呼ぶけど生返事ばかりで、フラストレーションが溜まっていくばかり。

ようやく借り家に戻って、手洗いうがいをしてから食材を冷蔵庫に入れた後にアサシンに問う。

「どうして腕を離してくれなかったのですか？」

アサシンはどうやら私が手洗いうがいをしている間に電子レンジを使ってホットココアを作ってくれていたらしい。

渡してくれたのでお礼を言いつつ、先ほどよりも幾分か気分が落ち着いた。

「離したらあの"金髪"のところに行っていただろ？」
「もちろん」

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