橄欖の側にて咲く青薔薇の密かな望み。そのニ

ハチジュウロク話 ページ39

しかしながらやはり迷惑をかけてしまったので改めて菓子折か何かを持って行くべきだろう。

なので翌日の昼。

眠い目を擦ってどうにか起き、百貨店へと足を運んで何かお礼になりそうなものを選ぶことにした。

正直同い年ぐらいの異性の知り合いはウェイバーさんしかいないため、男性の好みというものは全くわからない。

紳士用品のコーナーに行ってもハンカチやネクタイピン、万年筆や時計などなど。

どれを選べばいいかわからない。

あまり気負いしないものとなると、食べ物の方がいいだろうか。

ーーなんでも良いと思うぞ？
「(でも同盟相手だし、確定ではないですが一応こ、婚約者候補、ですし……)」
ーーお？ 気になり始めたのかマスター？
「……」
ーー冗談！ 冗談だってマスター、そんな怖い顔しないでって。

思わず真顔になってしまえば前にいた店員が引きつった顔をしていたので余程恐ろしい顔をしていたのだろう。

軽く謝って、それから何にするか考えた。

アトラムさん自身にかなりお世話になっているけど正直婚約者、というより友人関係の方が個人的には嬉しい。

好意は確かにあるけど、それは恋愛感情ではないことはわかっている。

なので勘違いされないものを選びたいのだけど。

「！」
ーー？ どうしたマスター。

くんくん、と香りを嗅ぐ。

とても良い匂いがする。

香りの元へと連れられるように足を進めると、それはアロマディフューザーであった。

鼻を近付けて匂いを嗅ぐ。

様々な匂いが混じってどれなのかわからないけど、確かに先ほど凄く好みの香りがしたのだ。

ーー犬のようにしてどうしたんだマスター。
「(凄く良い香りがしたのです)」

自分でも欲しいくらいの良い香りが。

あれでもないこれでもないと鼻を近付けて嗅ぎ分けていけば、一つ違うものがあった。

植物の香りのような、花の香りのような、爽やかでいて落ち着くような香り。

「あった」

これである。

思わず自分用とお渡し用の合計二個購入。

シンプルなガラスの小瓶とリードも一緒に買って、百貨店を出た。

ーー二個もキャスターのマスターに渡すのか？
「(いいえ、一個は私のです)」
ーー……なぁマスター、それってさ。

それって？

ーーあ、ないな。マスターの性格上それはないか。忘れてくれなマスター。
「(？ わかりました)」

よくわからないけども、アサシンがそう言うのならそうなのだろう。

出た足でアトラムさんへ渡すため、彼がいるビルへと向かうのだ。

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