橄欖の側にて咲く青薔薇の密かな望み。そのニ

ロクジュウヨン話 ページ17

リビングに入るとフローリングの床に上品なカーペットが敷いてあった。

フローリングを傷付けないようにしながらカーペットの上にキャリーケースを置き、先に部屋を見て回るかと思って一階から見て回る。

キッチンにダイニング、客室に書斎に寝室、トイレに浴室と、正直イギリスのアーチボルトの屋敷に引け劣らない豪華さで私としてはもう少し質素でも良かったのだけど用意していただいた手前だから我が儘は言えない。

ーー二階もあるな此処。
「使用するのは一階だけにしましょう」

これ以上見ていたら家が恋しくなってしまうのでリビングで荷物の整理をしていこう。

アサシンに霊体化を解いていただいて、中から色々な物を取り出していく。

大半は兄に持たされた魔術礼装の数々。

正直私には必要ないものや使い方が不明、そもそも使用用途が不明なものが大多数を占めているので使わないものは角に置いてもらった。

「……随分と無駄になったんだな」
「有り難いことなのですけど、私の力量では無理なことを兄もお分かりいただきたかったです……」

使えるものは侵入者探知の置物と結界の基盤になるであろう小石と、あと水銀が入った瓶と初歩的な魔術礼装数点のみ。

他はほぼ使えない、使えても上手く出来る自信がない。

とりあえず使えないものはキャリーケースの中に仕舞い込んでいく。

「魔術師としての腕はそんなになんだな、マスター」
「はい。私は結界魔術以外は初歩的なことしか出来ません」

強化とかなら少し出来るけどそれぐらいだ。

治癒となると、兄のスパルタ式指導のお陰で成功率が半々にまで上がったけどそれでも、だ。

「なので戦いの時は私のことを気にせずに戦ってください。防御に関しては余程のことがない限り破られたことはありませんので」
「……ということはあるんだな？ 破られたこと」
「はい」

一度、いや二度だけ。

二回とも同一人物からの攻撃だった。

「ならそれは出来んな。サーヴァントはマスターの矛となり盾となる。マスターは今回は聖杯を望むことではなく生き残ることを望んだ。ならば俺はアンタを守ることに専念するさ」
「……無茶はしたら駄目ですからね」
「おうさ」

使わないものを全部キャリーケースに戻し、またフローリングを傷付けないように私の自室として使おうと思っている書斎の方へとキャリーケースを運んだ。

「は？ 寝室使わないのか？」
「え？」
「え？」

寝室、使わないといけないの？

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