ハチ話 ページ10
レハエル、とは──。
「レハエルとは、カバラにおける七十二守護天使の一人。三十九番目の天使であり、罪人を受け入れるという役割を持つ天使だ」
そう説明をしてくれたうえ更に説明を続けてくれたのは、亡き兄の後を継いでエルメロイ教室を復興させ、ライネスちゃんによって義理の身内となったウェイバー・ベルベットさん。
今の現代魔術科のロード・エルメロイ。
そして、私と同じ第四次聖杯戦争の生き残った人であり、私と違って第四次聖杯戦争で何かを得た人。
一人でレハエルのことを調べてみても探し方が悪いのか、なかなか答えが出ないため博識な彼に講義終わりに無理を言って尋ねたのだけど、まさかそのような単語が出てくるとは思わなかった。
「罪人を、受け入れる……」
思わず言葉を繰り返してしまう。
罪人、という言葉は文字通り罪を犯した人、犯罪者。
「……すまない、少し配慮に欠けていた」
「……いいえ」
申し訳なさそうな声と謝罪に、うつむいてしまったまま首を振って否定。
ぎゅっと、左手を右手で握る。
もう何もない、けど確かにそこに令呪があった痕があるそれを意味もなく包むように握り締める。
意味はない、意味もない。
それでも精神を落ち着かせる方法の一つでもある。
「……教えていただき、ありがとうございます。ロード・エルメロイ」
「何度も言っているが、二世を付けてくれ。ましてや貴女からそう呼ばれるのは色々と私の心情的に苦しいものがある」
「でも、今は貴方がロード・エルメロイでしょう？」
「あぁ、そうだ。だが、私が君の兄の足元にも及ばないような凡庸であり、身に余り過ぎているこの地位は仮初めにすぎなことは貴女も御存知のはずだ、A」
わからない。
どうして拘るのか、わからない。
彼はライネスちゃんが成人するまでは確実に"ロード・エルメロイ"であることは変わらないというのに。
別に私は比べることも、差を見ることも、彼を通して兄の影を探すこともしないというのに。
「……他に、質問はあるかね？」
「いいえ。お時間を割いていただきありがとうございます」
レハエルのことは知れた。
だから今は彼に尋ねることはない。
「A」
軽く頭を下げて、準備室を出ようとしたところ後ろから声が掛かった。
振り返ると彼が私を見ていた。
「何故、貴女からカバラの七十二守護天使の名が出てきたのか。差し
「……はい」
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2023年3月22日 1時
