ナナ話 ページ9
「肉親である貴女が、亡き兄の
そう話した彼女はもう一度カップを持ち紅茶を飲む。
言っていることは
ただ既に私とライネスちゃんで決めたことがある。
「生憎ですが、お断りさせていただきます」
ゆえに、断った。
ピタリと彼女の動作が止まる。
もしかしたら彼女は私が断るとは思っていなかったのかもしれない。
私も、ライネスちゃんとの決定事項がなければ同行人としての話は受けていた可能性が高い。
源流刻印は彼女がロードの席へ着任する時には必要不可欠な臓器なのだから、それまでに完全に修復しておきたいのは事実。
だからウェイバーさんには頑張ってもらわなければならない。
ライネスちゃんのためにも。
「理由を」
彼女はスッとカップをソーに戻し、流し目で私を見てくる。
ガラス越しに見える彼女の目は感情の色が見えない。
「理由を、お尋ねしてもよろしいかしら」
「……義理の姉妹と先に約束をしたので。それに、ゲリュオン・アッシュボーン氏の相続の話はエルメロイにも来ております。誰が行くかも既に決まっているのに、私の独断で行動に移せる訳がありません」
「そう、ですか……。非常に残念です。貴女とは仲良くなれると思ったのに」
悲しげに眉を下げ笑う彼女。
ただ、目が爛々としている点を除いては本当に悲しんでいるように見えてしまう。
「ですが、もし気が変わるようでしたら御連絡を。数日の間は私も出発はしておりませんので」
一枚の紙を置いて彼女は席を立つ。
ふふ、と袖を口元に当てて笑った彼女はそれでは、と別れの言葉と私に対して会釈を最後にしたのち、私に背を向けて何処かへと歩き出していた。
姿が見えなくなるまで、姿がみえなくなってもしばらくは、彼女のしゃんとした背中があった場所を睨むように見据えて、それからようやくテーブルの上に置かれた紙を見る。
それは十ポンド札が一枚。
これで払え、ということなのだろう。
ただ、紙幣の下にカードが一枚挟まれていた。
紙幣と一緒に取り、目を通す。
そこには携帯電話の番号らしきものと──。
「
見覚えも聞き覚えもない、何かの呼称か名称かが綴られていた。
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2023年3月22日 1時
