橄欖の側にて咲く青薔薇の秘めた贖い (ページ7)

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ゴ話ページ7

「だが、美味しいものは誰かと分かち合うべきだろう？」
「……なら、一つだけ」

すすめてくるライネスちゃんに、これ以上断ることは彼女に対して失礼だからとそっとショコラへと手を伸ばす。

形が様々で色もオーソドックスなチョコレートブラウンやホワイト、ローゼ等。

種類が豊富だった。

どれにするかと少し手をさ迷わせて、ふと目についたチョコに手を伸ばす。

オーソドックスなカラーで美しい薔薇の形をしたショコラを取り、口の中へ。

ほのかな甘味の中にある僅かな苦味と、鼻腔をくすぐる薔薇の香りがとても落ち着く。

そのまま月霊髄液が淹れた暖かい紅茶を飲むと、ほどよい甘さと紅茶の風味が合わさってとても美味しい。

「なかなかだろう？」
「……ええ、とても」

得意気に笑うライネスちゃんに頷く。

流石彼女が贔屓するだけあり、舌触りがとても滑らか。

味もしつこくなく、かといってあっという間という訳でもない
。

今度私も買ってみようかと思うほど、とても美味しいショコラだった。

「気にせず食べてくれて構わないよA。君は私に遠慮し過ぎだ。ショコラぐらいで家は潰れやしないさ」

嫌味か純粋にそう思ってくれているのか、どちらかはわからない。

実際問題、十年前に兄が持ちうるほぼ全ての礼装や財産をあのホテルで失ってしまったうえ兄やソラウさんまでも失い、エルメロイの源流刻印さえも僅かしか取り戻せなかった。

それが原因でエルメロイ派の人達が残った財産さえも持ち逃げするという事態にまで発展した、私の失態ゆえに何も言い返すことはできない。

「ほんと君は随分とネガティブ思考になったね。別にさっきの発言はそういう意味じゃないさ」
「はい……」
「さっきも言ったが君は私に対して遠慮し過ぎなうえ悪い方へと考え過ぎだ。もっと気楽にした方がいい」
「……」
「やれやれ……。我が義理の姉妹はそういうところだけは頑固なのはどうしたものか」

肩を竦めてしまうライネスちゃんに申し訳なく思って謝ろうと口を開けば、まるでタイミングを見計らったようにショコラを取ったライネスちゃんは身を乗り出して私の口へショコラを入れた。

「そういう話は後にしよう。今は楽しいお茶会だ」

笑ったライネスちゃんは座り直すと彼女もショコラを取り、私と同じように食べていた。

彼女が私の口の中に入れたショコラは体温で溶け出したため、口内の味蕾によって味がよくわかる。

それはひどく美味しく、ひどく苦く、ひどく甘かった。