橄欖の側にて咲く青薔薇の秘めた贖い (ページ23)

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乖離城アドラ　グレイページ23

拙(せつ)はずっと疑問に思っていたことが、今回師匠と一緒に山奥にきたことによって一つ……いいえ、きっと二つ解消できたと思う。

一つは師匠の師匠、前のロード・エルメロイの人との関係。

今回出会った人達の色んな情報によって錯綜してしまったけど、それでも師匠が直接な要因じゃないことはわかった。

間接的に問われると、きっと師匠は頷いてしまうだろうけど……。

もう一つはAさんのこと。

前のロード・エルメロイの妹で、ずっと悲しそうなつらそうな、どこか時が止まってしまった忘れ人みたいな儚く独特な雰囲気を持った女性。

今回のことでAさんが師匠が参加していた聖杯戦争の生存者の一人だということ、前のロード・エルメロイと一緒に協力者として参加していたこと、Aさん一人だけ助かっていること。

それが、わかった。

師匠との関係性は頭の悪い拙ではうまく説明できないけど、複雑な関係であることだけは拙でもわかった。

いつも師匠は時々エルメロイ教室に現れるAさんを言葉にするには難しい目で必ず一度は見ているから、きっとエルメロイ教室の皆は何かあるって気付いていると思う。

実際、何度かライネスさんとAさんが様子を見にきたタイミングでフラットさんが直球で尋ねて、ライネスさんも便乗して師匠に私語は慎むように怒っている光景を見たことがある。

その時のAさんは師匠を見ているようで、師匠を見ていないように拙は思う。

わからないけど、師匠を通して誰かを見ているような……。

「あぁ、それは亡き義兄(あに)君を重ねているんだと思うよ。前のロード・エルメロイ、Aの実兄さ。A自身は重ねないようにしてるみたいだけど、同じ肩書きで教鞭もとっているのだから、兄上がいくら義兄君に似ていないとはいえ無意識に重ねてしまっているんだろうね」

誰かを重ねる、という言葉に少しだけ考えてしまう。

拙も、知ってるけど知らない誰かに重ねられた経験があるから。

「へぇ、師弟揃ってそうとはね。まぁAは重ねて見ていることに自覚して自己嫌悪によく浸ってるから気にしなくていいよ。私にも兄上にも君にも、どうしようもないことだからさ」

そう笑うライネスさんはにたりと笑うと、拙に違う話題を提案してくれた。

後日、Aさんと深く関わることになるとはこの時の拙は想像もしなかった。

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これにて乖離城アドラは終わりです。
次は双貌塔イゼルマです。