イチ話 ページ3
「────ッ!!」
悲鳴のような呻きを口から叫び、目を覚ました私は勢いよく起き上がった。
膝の上にあるブランケットを呆然と見ながら荒い呼吸を何度も繰り返すけど、直ぐに悪魔のことを思い出して顔を上げて目の前を見るが眉間に拳銃を突き付けてくる悪魔が立っている訳ではなく。
あるのはカーテンから差し込む陽光で明るくなっている壁があるだけ。
見渡しても、月光も廃墟も赤い水溜まりも、薬莢も、倒れている大切な人達も、いない。
見えるものはいつも使っている殺風景な自室だけ。
必要最低限の家具しか置いていない、生活感が薄い私の部屋。
「…………」
大量にかいた汗によって髪や服が肌に張り付いて不快感があるけど、そんなことよりも治っているのにも関わらずあるはずのない痛みを頭に感じてしまい、堪えることができずに思わず顔をしかめて唸ってしまう。
患部である額を触れば貫かれたはずの傷口に穴は開いていなく、あるのは
兄もソラウさんが亡くなり、ランサーも消えて、
心はこんなにも荒んでいるというのに、身体は今もなお生命活動を続けて無様にも生きようとしている。
膝を抱えて項垂れても、それは格好と私の精神的なものだけであって身体自体は健康そのものだ。
「ごめん、なさい……」
私だけが生き残ってごめんなさい、兄を助けられなくてごめんなさい、ソラウさんを助けられなくてごめんない、魔術刻印を守れなくてごめんなさい。
意味もなく。
何度も謝り、懺悔をするけど誰も救ってはくれない。
過去は覆せない。
現実は書き換えられない。
「ごめんなさい……」
私は大きな罪を犯した。
どうなるかわかっていたというのに、大切な人達を見殺しにしてしまったという罪を。
贖うことなどできない、拭うこともできない罪を。
罰を望むことさえも
夢であればどれほどよかっただろうか。
ただの悪夢だと思えたらどれほどよかっただろうか。
目を覚ませば大切な人達がいるという、淡い幻想を抱くけど現実は容赦なく残酷な事実を突き付けてくる。
「私だけ生きていて、ごめんなさい……」
あぁ……、また、大切な人達を救えなかった世界で一日が始まってしまった。
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2023年3月22日 1時
