ジュウハチ話 ページ20
「……お姉様？」
「はい、実はAお姉様はその……お兄様の
「……」
困ったように、悲しそうに、寂しそうに、
ロザリンドちゃんはそう言った。
「Aお姉様のこと、このままAお姉様とお呼びしてもいいでしょうか」
まさか私があのハイネ・イスタリの伴侶の候補として上がっていたとは思わなくて目を瞬いてしまう。
同じく隣で固まる彼の気配を感じつつも、ロザリンドちゃんの提案にどうしようかと悩む。
彼女は私を心の拠り所にしたいのだろう。
私がライネスちゃんを心の拠り所とするように。
「ロザリンドちゃん」
「ダメ、でしょうか」
眉尻も目尻も下げて悲しそうな表情をするロザリンドちゃんに良心が呵責する。
けど、断らなければならない。
別に心の拠り所にすることは全然問題ない。
ただ、立場というものが私にもロザリンドちゃんにも存在する。
同じ派閥のであれば受け入れていたけど、イスタリとエルメロイは現時点では交遊関係は一ヶ月前のアッシュボーンの秘宝の件のみ。
今先程、ハイネ・イスタリの伴侶候補としての繋がりができていたという事実を知ったけど、それはそれ、これはこれだ。
「私は貴女のお姉様にはなれません」
「……どうしてですか」
すっと顔に影が濃く現れた。
「私のお兄様がいないからですか？ イスタリの家に魔術刻印がないからですか？」
「いいえ」
屈み、捲し立てて尋ねてくるロザリンドちゃんと目線が合うようにする。
防音系の結界魔術を張るべきだけど、それは彼がしてくれていた。
といっても何かあったときに渡しておいた、魔力を流せば防護用の結界が展開される魔術礼装にも満たないルーンストーンだけど。
「私が子供だからですか？ 魔術も十分に扱えない、未熟者だからですか？」
「いいえ、違いますよロザリンドちゃん」
「なら！ どうしてですか！ 私のお姉様になってくれないのですか！ 私に優しくしてくれたのも、私の話も聞いてくれたのも！」
どんどんと脈絡もない、支離滅裂な言葉になっている。
「落ち着いてください、ロザリンドちゃん」
「大切な人を亡くしたこともないのに！」
「ロザリンド嬢、それは……」
口出ししてこようとする彼を手で制して、彼女の目を見る。
「あ……」
彼女の大きな瞳に、ひどく悲しそうに笑う私の顔が写っていた。
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2023年3月22日 1時
