橄欖の側にて咲く青薔薇の秘めた贖い (ページ16)

今日:14 hit、昨日:5 hit、合計:2,498 hit

ジュウヨン話ページ16

純粋でいれるほど、若くもなければこの世界は優しくない。

「二世を付けてくれ、A」
「……ですが、わかりました。貴方が私のことをそこまで買い被っているのでしたら仕方がありません。近々イスタリ家のその少女にお会いするようにいたしましょう、ロード・エルメロイ」
「……すまない」

苦虫を噛んだかのような表情をする彼の懇願を無視して、席を立つ。

「話は以上でしょうか、ロード・エルメロイ」
「あぁ……」
「なら、怪我に障るかもしれませんので私はもう帰りますね。お大事に、ロード・エルメロイ」
「……呼び止めてすまなかった。それと、二世を付けてくれ」

それではと背を向ける。

病室を出れば廊下にフードの少女が気まずそうに立っていたので中へ促し、今度こそ用件は済んだために病院を後にできた。

まるで見計らったかのようにエントランスの前に車が止まっているのだからそのまま乗ると、愉快そうな義理の姉妹がいるのだから睨んでしまう私は悪くない。

いつも側にいる月霊髄液はおそらく試験管に戻しているのだろう。

「はははは！随分と不機嫌そうな顔をするね、A。折角仲を取り持ってあげようと思ったのに」
「そんなことしなくていいです、ライネスちゃん」

ゆっくりと発進する車は屋敷に戻る。

ライネスちゃんはにこにこと笑うだけ。

「何か進展はあったのかな？」
「いったいライネスちゃんは何を期待してるのわかりませんが、何もありませんよ。お見舞いの品を渡して、彼の頼み事を聞いただけです」
「へぇ、頼み事……。どんなものか聞いてもいいかい？」
「イスタリ家の少女と会うだけです」

何も疚しいことはないので素直に言うけど、ライネスちゃんはつまらなさそうな表情をするのだから困ってしまう。

ライネスちゃんはいったい私に何を期待しているのか。

「君は鈍感だし、兄上は奥手だからね。やれやれ……」
「私は鈍感ではありません」
「そういうのはもっと広い視野と合理的な思考、それと私の意図に気付けるぐらいになってから言い返すものだよ、A」
「意図には気付いています。ロード・エルメロイとの仲を改善させるためでしょう？」
「残念、六十点だよ」
「赤点ではないので気にしません」

全部ではないことに少しだけ残念に思ってしまうけど、大人なので気にしない。

このようなことで反応してしまうとライネスちゃんにからかわれてしまう、というあまり嬉しくない過去の経験則から学んだ。