橄欖の側にて咲く青薔薇の秘めた贖い (ページ15)

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ジュウサン話ページ15

「何故そう思うか聞きたい」
「私が聖杯戦争から戻ったあとのことは、ロード・エルメロイも御存知でしょう？」

尋ねると頷いてくる。

「あぁ、知っている。それと二世を付けてくれA」

やはり知られていた。

十中八九、情報のリークはライネスちゃんだろう。

今更過去のことをどうこう言うつもりはないけど、せめて一言だけでもほしかった。

脳裏に浮かぶ、可愛らしい笑みのライネスちゃんに少しだけ文句を言いつつも彼の言葉を無視して言葉を続ける。

「ならば、その子が今現状、そうしてこれからどうなるかの予想が私にはわかります。わかるから、その子がどうしてほしいのかどんな声をかけてほしいのか、わかってしまいます」

だって私がそうしてほしかったから。

「……」
「私がしてほしかったことを、やってほしかったことを、かけてほしかった言葉を、その子にするでしょう。ですが、それはただの偽善でしかありません。その子を純粋に心配している訳ではありませんから」
「だから、会えないと？」
「はい」

会わないではなく、会えない。

自身の醜い部分が発覚してしまうから、だから会えない。

だというのに、彼は苦笑いを浮かべているのだからわからない。

どうしてそう困った子を見るような、そんな顔をするのか。

「Aは変わったようで根本は変わっていないな……」
「……」
「君が考える偽善というものは人間全てにあるものだ。私とて、君の善意に漬け込んで君自身全く関係のないイスタリ家の少女のことを頼もうとしている。これも、偽善だ」
「いいえ。貴方はその子のことを心配しています。それは偽善とは言いません。ロード・エルメロイ」
「それだよ、A。あと、二世を付けてくれ」

目を瞬いてしまう。

それ、とは？

「偽善か偽善ではないか、結局判断を下すのは本人ではなく他人だ。例えいくら君自身が偽善的な言動だと思っていても、された側は善意と捉えることが多い」
「ですが」
「それに君は、イスタリ家の少女のことを思って会わない方がいいと自己判断を下した。偽善的な行動になってしまうからと。」
「……」
「その判断は少女を心配しての気持ちが確かにあったからだろう、A」
「……。私は貴方が思うほど崇高な感情などありませんよ、ロード・エルメロイ」

私は偽善的だ。

昔は確かに純粋に心配できたかもしれないけど、今はもう無理になってしまった。