ジュウニ話 ページ14
問えば彼も私を見据えてくる。
相変わらず、その目に写るものは何か言いたげなものは変わらない。
「何度も言うが、二世を付けてくれA。決して私ではケイネス師のようにはなれない」
「……それで、用件はなんでしょうか」
彼の言い分を無視して本題に問えば、形の良い眉を寄せただけ。
ただ、次に口開いた彼の言葉は私を呼び止めた理由だった。
「アッシュボーンの件はAも聞いていたな？」
「はい。ライネスちゃんから直々に聞いてました。貴方が代理人として参加するということも、ライネスちゃんから聞きました」
「その件の報告だ。結論から言えば、アッシュボーンの秘宝はライネスには使えない」
「使えない？」
どういうことだろうか。
思わず眉間に皺が寄ってしまう。
「すまない、言い方が悪かった。確かにアッシュボーンの秘宝はあった。だが、その秘宝を用いてライネスが持つ源流刻印を修復させることはデメリットが大きすぎるために使えない」
そうして彼はアッシュボーンの秘宝を巡って起こった
その中で殊更気になったのはイスタリ家の女の子のこと。
慕っていた兄を失い、源流刻印をも失ってしまった、まるで私と同じ境遇の女の子。
「君に頼みたいことは、そのイスタリ家の少女のことだ」
「……保護すればいいのですか？」
例え本人に過失がなくても関係ない。
魔術師にとって命よりも大事な源流刻印を失くしたとなれば、争いの火種になる、なってしまう、なってしまった。
ましてやあのハイネ・イスタリと源流刻印の二つ同時に失ってしまったのだ。
今後その子がどうなるかなんて、私の経験に基づいてわかってしまう。
「いや、そこまではしなくてもいい。だが、一度でもいいから会って会話をしてくれないだろうか」
頷く。
もちろん、会う。
きっとその子は私に会うことは望まないだろうけど、話したところでその子の現実は変わらないだろうけど。
それでも、少しでも心の傷を軽く──……。
「？ A、どうかしたのだろうか」
「……いいえ、私にはその子に会う資格はありません」
考えて、気付いてしまった。
私はただ、私と同じ境遇のその子に自身を重ねて、当時の私がしてほしいことをその子にしようとして過去の私を慰めたいだけの、ただの打算的な行動でしかないということに。
なんて、醜く卑しいのだろう。
気付かなければ私はその子に偽善を押し付けてしまっていたに違いない。
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2023年3月22日 1時
