arc_en_ciel Ⅲ【虹】 (ページ13)

今日:5 hit、昨日:29 hit、合計:62,628 hit

. ページ13

.

『次は____大阪___________』

3年ぶりの大阪。出来れば、もう帰りたくないとまで思っていたのに。

“ごめん！3日間だけ、大毅のこと頼める、！？”

焦ったような濵ちゃんの口調にどうしても断れなくって。

新幹線の窓から、久しぶりに見る大阪の街並み。すっかり真っ暗やけど、なんだか酷く懐かしくって。

なんだか泣きそうになったのを必死に堪えた。

.

「ただいまー、」

「望、折角夏休みなんにごめんなぁ、」

“また背伸びたんちゃうん？”

なんて俺の頭を撫でてくる濵ちゃん。

「大毅も望に会いたがってたで？手ぇ洗って、行ったって？」

「…ん、」

お兄ちゃんの大毅は、“菌”というものに凄く弱い。

自己免疫を生まれつき自分自身で作ることが出来ないから、少しの菌にも気をつけなくちゃいけない。

洗面所で手を洗い終え、そこに置いてあるアルコール除菌を吹きかけて、リビングに向かった。

.

「んぁっ、…の、…ちゃっ、！」

リビングのど真ん中にあるどデカいベッドでニコニコと笑う3年ぶりのお兄ちゃんの姿。

最後に会った時よりもずっと細くなっていて、思わずお兄ちゃんから、目を逸らしてしまった。

「…のっ、ちゃ、あ…なっ、？」

“望のお兄ちゃんって、お話も出来ひんショウガイシャ、なんやってさ”

“望、ごめんなぁ？大毅の事よろしくな？”

お兄ちゃんの声を聞いて思い出したのは、全部、思い出したくない過去の事。

「…のん…ちゃ、？」

「…ぁっ、」

こんな事思い出したのも、夏休みに帰省しなくちゃあかんようになったのも。

全部、全部。

「…にいちゃんのせいやから、」

俺の言った言葉が聞き取れなかったのか、それとも、理解できひんかったのか分からんけど、お兄ちゃんは、相も変わらずにニコニコとこちらに笑顔を見せていた。

屈託のない笑顔にまた腹の立った俺は、自分の部屋に戻った。