阪神共和国 ページ6
フィリアたちは、とても引き込まれるような感覚と浮遊感に襲われながら次元を移動していた。
慣れない感覚にフィリアは、必死にバランスを保とうとしていた。
どれくらいたっただろうか、突然浮遊感がなくなり、新たに重力によって地面に引き付けられる感覚に変わった。
驚いたが、すぐさま着地の体制をとった。
少したたらを踏んだが、両足で着地することができた。
後ろを見やると、黒ずくめの男が先ほどの着地で服に着いた埃を払っていた。
白い魔導士は、杖を持ってモコナを抱えていた。
地面には、小狼とその腕に抱かれた女の子が倒れていた。
「あちゃー。完全に気絶しちゃってるねー」
白い魔導士は、しゃがんで小狼の様子を確認していた。
フィリアは、辺りを見渡していた。すると、男と目が合った。
「どないしたんや?」
その男に声を掛けられた。
「なんや、あんたら困っとるんか?」
独特の訛りでその男は話してくる。
「はいー。俺たち、行く当てが無いいていうかー。
一晩、泊まれるとこがあるといいなーって」
ヘラっとした表情で白い魔導士は、男に話している。
「そうか!それには、いい心当たりがある。
ほな、ついてき」
笑顔でフィリアたちを手招いた。
いまだ起きない小狼を黒ずくめの男が渋々抱え、
フィリアたちは、男についていくことにした。
案内されてきたのは、フィリアが学生時代を過ごしていた、
学生寮のような、たくさんの部屋が集まった建物だった。
とわいえ、建物の造りも新しさもフィリアの学生寮とは、違ったが。
強いて言うなら、錆びれたホテルのようなものかと思っていた。
その中の一部屋を貸してもらい、部屋の中央に布団をひき、
小狼とさくらを寝かしていた。
黒ずくめの男は、何も話さず壁際にあぐらを組んでいた。
魔道士は、借りたタオルで二人の体を拭いていた。
モコナも、タオルを持って手伝っていたので、
フィリアも、タオルを手に取り、さくらの体を拭き始めた。
拭き終わり、フィリアが使い終わったタオルを片付けていると
小狼が目を覚ました。
「ぷう、みたいな」
「さ......くら......」
小狼の顔をモコナは、覗き込んだが、
小狼は、まだ意識がはっきりしていないのか、
さくらの名前をうわ言のように呟くだけだった。
「......ツっこんでくれない」
モコナが、しくしくと泣きながら、小狼の顔を拭いていた。
「あー、目覚めたみたいだね」
モコナを抱きあげながら魔導士が小狼に声をかけた。
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作者名:浅葱由希 | 作成日時:2016年3月20日 12時