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「……異界を旅するということは、想像以上に辛いことよ。
様々な世界があるわ、例えば、そこの三人がいた世界。
服装を見ただけでもわかるでしょう。
どちらも、あなたがいた世界と違う」
小狼の決意を確かめるように侑子は、問い続ける。
「知っている人、前の世界であった人が、別の世界では
全く違った人生を送っている。
同じ姿をした人にいろんな世界で何度も会う場合もあるわ。
前に優しくしてくれたからといって、今度も味方とは限らない」
小狼は、侑子の目をそらさずにまっすぐ見つめて話を聞いている。
「言葉や常識が全く通じない世界もある。
科学力や生活水準、法律も世界ごとに違う。
中には犯罪者だらけの世界や、嘘ばかりの世界や、戦の真っ最中という世界もある。
その中で生き続けて、旅を続けるのよ。
何処にあるのか、何時すべて集まるのか分からない、記憶のカケラを探す旅を」
小狼は、一度も目をそらさずに侑子を見続けていた。
ふっと侑子は、諦めたかのように優し気な表情で小狼を見つめた。
「でも、決心は揺るがない……のね」
「……はい」
「覚悟と誠意。何かをやり遂げるために必要なものが、
あなたにはちゃんと、備わっているようね」
侑子は手を再び掲げ、モコナを宙に浮かした。
モコナの足元には魔法陣が展開され、背中には小さな体には、見合わないくらいの大きな翼が生えてきた。
「では、行きなさい」
モコナが大きく口を開け勢いよく5人を吸い込んだ。
ぱくんと飲み込むと、モコナも魔法陣とともにシュルンと消えた。
気づけば、空に重く立ち込めていた雲が消え、綺麗な青空が見えていた。
「……どうか、彼らの旅路に幸多からんことを」
(次回、阪神共和国編です！)
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作者名：浅葱由希 | 作成日時：2016年3月20日 12時
