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____もう、その思い出に帰ることはない。
今、侑子を見据えているフィリアの両目には、
確かに揺るぎない決意の色が見て取れた。
「わかりました。差し上げます」
銀時計をテーブルの真ん中に置いた。
侑子は笑みを浮かべてそれを手に取った。
「確かに対価は受け取ったわ」
横に立っている
「宝物庫にそれを置いてくるついでにあれを取って来なさい」
そう言われた四月一日は、銀時計をもって部屋から出て行った。
帰ってきた
代わりに
「……これは？」
フィリアは、侑子に問うた。
「誰とは言えないけれど、あなたのよく知っている人が対価を支払って、あなたに着てほしいと私に託したのよ」
「着るか、着ないかは、あなたの自由よ」
フィリアは、悩んだ。受け取ってもいいが、今着ている服を荷物にするのは面倒だと考える。
そこでフィリアは、ひらめいた。今着ている服を有効活用する方法と、
頼めたら、頼みたい願いが１つあったことに気が付いた。
「あの、もう一つ願いを叶えてほしいのですが」
「……聴くわ」
相手が何を願うのか楽しみな表情で、侑子はフィリアを見つめた。
「私を一度だけ、自分の世界に帰る
「……対価は？」
「今着ている自分の服です」
「いいわ」
フィリアの願いと対価が侑子にとって、
とても満足のいくものだったので侑子は笑った。
侑子から旅装束を受け取ったフィリアは、二人の女の子に連れられ別室で着替えた。
着てみると、体に少しゆとりがあるが
それがちょうどいい感じがした。
マントの裾には控え目に
「どう？」
「気に入った？」
ツインテールに結んだ女の子と
ショートカットの女の子が
フィリアをのぞ着込むような感じで聞いてきた。
「ええ、とっても」
そう返すと二人は手を取り合って、やったねなどと言っていた。
「さあ、帰ろう」
「主様が待っている」
二人に手を引かれフィリアは侑子のいる部屋へと戻った。
「あら、似合ってるじゃない」
「ありがとうございます」
侑子に対価である、魔法学校の制服を渡すと
代わりに手のひらサイズの赤い球体を渡された。
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作者名：浅葱由希 | 作成日時：2016年3月20日 12時
