柱もかまぼこ隊もおかしいのが草超えて森

百玖拾:・ ページ2

『未熟って……誰のことですか』




久しぶりに対話をした私の声は少しだけ掠れていた。




「……俺のことだ、好いている女ひとり守れない」





私が聞いているとは思っていなかったのか、少しだけ反応したあとそんな答えが返ってきた。




未熟じゃない。




冨岡さんは立派な人だ、すごい人だ。




お姉さんの死から、親友の死から這いつくばって必死こいて今の地位を手に入れた。




面と向かって言ったことは無いけれど、私は彼を1番尊敬している。




炭治郎と禰豆子ちゃんの可能性を見出した。隊律違反と分かっていながらも。




冨岡さんの目に狂いはなかった。




いつの間にこの人に惹かれていたんだろうか。




最初はやたらちょっかいをかけてくる変態だと思っていたのに(最低)




……きっかけなんかなかった。




深い海のような瞳。風に遊ばせる1つに結った藍色の髪の毛。私を抱いてくれる力強い腕。




私のために息を切らすほどの速さで走ってくれるその姿。




なんだ、私冨岡さんのこと大好きじゃん。




ねぇ、冨岡さん。




『私、いつの間にか冨岡さんのこと好きになっちゃってました』




折られた腕が痛いのを堪えて冨岡さんの頬に手を伸ばす。走っているせいか彼の頬は紅潮して熱い。反対に私の手が冷たいのか。その頬に触れるだけの口付けを。



ずるっと腕が落ちたところで、冨岡さんが私の名前を呼ぶのを最後に私は意識を失った。

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