特別なフタリ (ページ2)

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何回同じ景色を眺めただろう

何度見ても飽きることのないこの景色は、

渡れば向こう側に彼がいるとわかっているから

海を眺めるのが好きな彼と唯一つながっている気がした

最後に分かれてから幾年と月日、母から彼が帰ってきていると聞いた

涙は出なかった

実感が湧かなかったから

かわいい私の双子の妹は花のような笑みを浮かべて喜んでいたけれど
彼にとって帰国自体大きなイベントではないし、夢の過程の一部

会いに来てくれるわけもないし、家に行けるほどの勇気はない

会いたい

小さい頃は当たり前のように彼が隣にいたのに、
学年が違くとも、部活がない日は互いの授業が終わるまで待ったり、
冴君のサッカークラブが終わるまで待ったりして、暗い夜道を手をつないで帰っていた

彼がサッカー選手になるのは幼いながらに確信していたし、遠いお国に行くといわれても夢のためならしょうがないと、無知ゆえに素直に受け入れていた

でも今は、

「寂しい、、な」

冴君がいなくなってからもこの海を見に学校終わり来ていた

「冴君…」

いつも前を歩いて私を引っ張ってくれたｓ

『お前は俺の横にいてくれればいいんだよ』

『俺が世界一のサッカーを見せてやる』

サッカーなんて興味なかったけれど、
冴君が好きだから好きになったの

私は冴君が一番なのに、彼にとってのトクベツは二つある

でもいいの

他人には興味がなくて、サッカーが日常であり人生だった彼だからこそ、

数少ない唯一には深く執着できる

遠くにいても愛されてるって思い続けられる私は幸せ者

「冴君…」

一人はつらいよ

「ずっとここにいたのか」

数年会ってないとは思えないほど、軽い会話の始まり

ほんとに、あなたらしい

河川敷のほうに視線を戻して視界に入れた数年ぶりのあなたは、

記憶と同じ優しい目をしていたの

「おかえりなさい。冴君」

*