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ビルが立ち並ぶその路地裏はクラブの裏口につながっていた
壁に寄りかかりながら荒い息を吐き、額から流れてくる血のせいで前が見えづらい
ゆらりと前にいる人物が近づいてくる
カツカツと足音を響かせて近づいてくる男に迷いはない
比喩でもなく悪魔だと思った
「意外と粘るもんだな。骨八本いっといて」
何をいってるんだ。わざと意識飛ばさないぎりぎりのラインを狙って追ってくるくせに
痛覚も限界を超えて、どこもかしくも麻痺ってきてやがる
文句を言ってやりたくても恐怖が勝って口が開かない
「同情するぜ。お前はただ好みの女に声かけただけなのに」
バーに一人でワインを飲んでた女の後姿に惹かれて声をかけただけだった
クラブに一人でいる女なんて、クラブに行き慣れてるか、男漁りかだろ
最近ご無沙汰だったし、顔がある程度ブスじゃなければ相手してやるかなんて思って
振り返る女の姿に一気にテンションが上がった俺は、調子乗って肩に手をまわし、戸惑ってる女に何清楚ぶってんだと罵声を浴びせそのまま立ち上がろうとした
うるさい音楽と体に回った酒で周りがよく見えていなかった
周りが俺を呆れや引きの目で見てくるのも、俺の背後に迫っていた恐怖も
「ま、今回の件は椿(つばき)を一人にした俺らも非があるケド」
「す、すみませ、」
「あ？誰が謝罪が欲しいなんて言ったよ。結局お前が椿に触ったことに変わりはねぇんだし、謝ったところでてめぇの地獄行は決まってんだ」
酔っていたとはいえまさかこんなことになるなんて
「兄貴の言う通りまだ牽制が足りなかったってことか、チッ」
知らなかったわけじゃない
こいつらからしたらイキってるだけの俺でも十分ぐらい、女のことは知ってた
「お前なんかに構ってる時間はねぇ。椿が兄貴に食われちまう前に終わらしたいんでね」
目の前に置かれていた片足が上がるさまがスローモーションに見えた
なんで、ただ、いつもみたいにクラブに行って、女に声をかけただけ、なのに
「恨むならてめぇを恨め」
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作者名：茶々 | 作成日時：2022年10月18日 13時
