愛に溺れ。 (ページ42)

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( ar )

「おわっ…たぁ〜〜…！」

時刻は18:33。
仕事量が少なかった分いつもより早めに終わった。
会社を後にしようと急いで荷物をまとめている時。
後ろから声をかけられた。

「おつかれー。なぁ、この後呑みに行かね？」
「先輩お疲れ様です！すみません…今日ちょっと用事が…」
「んだよー、ノリ悪いぞー。次穴埋めしとけよ？」
「はい！」

先輩からの誘いを断った。
申し訳ないけど今日は先約がいる。

鼻歌を歌いたくなる気持ちをぐっと堪えて待ってくれている人の元へ向かう。

ガチャ＿＿。

約1年前に貰った合鍵を使い家の中に入る。
後に気がついたのか中の方から走ってくる足音が聞こえたくる。

「だいちゃん！」
「おー久しぶりー、山田」

奥からニコニコの笑顔で出てきたのは山田涼介。
先輩の誘いを断って家に直行しなかった理由はこれ。
山田に会うため。

「はぁ〜…まじ疲れた〜」
「………」

荷物を置いてソファにくつろぐと当たり前のように膝の上に乗ってきた。
いつもならここでぐりぐりしてくるんだけど…今日はして来ない。
機嫌悪いのかな？

「どうした？」
「…今日は、…外さないんだね。…指輪」
「ぁ、ごめんごめん」

知念とお揃いで着けてる指輪。
山田と会う時は毎回外してるのに。

右手の薬指から指輪を外しテーブルの上に置く。
俺と知念の繋がりを断つ行為。
ごめん知念。
知念という恋人がいながら他の人を好きになっちゃってごめん。
こんなクズな彼氏で…ごめん…。

言わなきゃいけないのもわかってる。
別れた方がいいのもわかってる。

でも知念が俺のこと大好きなの知ってるから…。
だからなかなか言い出せないんだ。

いつか、…いつか本当のこと伝えるから…。
俺に勇気が出るまで待っててよ。

( ym )

「だいちゃん、お風呂入りな！
もう沸かしてあるから！その間にご飯作ってるね〜」
「まじ？さんきゅ〜」

上機嫌でお風呂に向かうだいちゃん。
俺の視線の先には置きっぱなしの指輪とスマホ。

「……」

指輪を盗ってそっと自分のポケットの中に入れた。

俺の誕生日を入力すれば簡単にスマホを開けた。
だいちゃんの恋人である“ちねん”に連絡を入れれば完璧。

だいちゃんには俺がいる。
いつか俺だけのものにしてみせる____。