愛に溺れ。 (ページ37)

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( ym )

沢山の寝癖をつけて眠そうに目を擦りながら洗面所に入ってきた大ちゃん。
俺の姿を見るなり動きをピタリと止めてしまった。

「ぇ、と〜……」

「…………」

何も言わないで見つめてくる……。
どうしよう…。なんて言ったら……。

「え、山田？」

「はい……。……え？」

な、なぜ？なぜわかった？

「わかるの……？」

「当たり前じゃん！雰囲気が山田だし」

その言葉が嬉しくて自然と口角が上がってしまう。
それを隠すように下を向く。

「それウィッグかなにか？」

「違うよ。朝起きたらこうなってたの
髪もその…胸も全部本物」

「じゃあ今は本当の女の子なんだ！」

「まぁね。そういうこと」

未だにジロジロと見てくる大ちゃん。

どうしよう……。この姿を見てやっぱり女の子の方がいいってなったら…。
そんなのヤダよ…。

「髪型も俺の好みだし…服装もちょっとオーバーで可愛い。これぞ彼シャツって感じがしていいねー」

あー……完全に負けた。女の子に負けた。
俺、捨てられちゃうのかな……ははっ…。

「……でも、いつもの山田の方がいいな！」

「は…、え？」

「もちろんこの姿でも可愛いし山田は山田だよ？
でもさー俺が惚れたのは男の山田だし

それに隣に並んだ時同じぐらいの目線の高さなのが好きだったんだよな！
横をチラッと見ただけでお前の可愛い顔見れるしさ。
この身長差だとそれができないじゃん」

どうしていつもいつも求めてる以上のことを言ってくれるのか。

「大ちゃんは凄いね」

「ん？なんか言った？」

「ううん。なんにも」

なんだか悩んでたのがバカみたい。

さて、これはどうやったら元の姿に戻るんだろう…。
でもどうせならこの格好をエンジョイしたい気もするんだよなぁ。

「んー。ね！山田！」

「なに？」

「今からデート行こ！」

「は？なんで」

「山田、いつも周りの目気にして全然楽しそうじゃないじゃん？
でもこの格好なら手だって繋げるし女子が行きそうな可愛いところにだって行ける
いいことずくしじゃん！」

たしかに……。それはそうだ…。

「…く……。行く…！準備してくる！」

やっぱりこうやって俺の事なんでもわかる大ちゃんが大好きだ。

これからは男の姿でも手を繋げるように頑張るね。

今日一日よろしく。大ちゃん。