愛に溺れ。 (ページ25)

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( ym )

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あれ…？なんか…聞こえる…。

「っ…」

日差しが眩しすぎてすぐには開けられなかったけど徐々に慣れてきて見えたのは心配そうに見つめる1人の男子生徒の姿だった。

「あ、起きた？」

「ありおか…せんぱい…？」

「俺のこと知ってくれてんの？ありがとう」

知ってるも何も顔面偏差値が高いこの学校の中で1番モテてるって…あなためちゃくちゃ有名ですよ。

「ごめんな。本当は走ってる時に体調悪そうなの知ってたんだけど…
水とかいろいろ持ってくるために一旦最後まで走ってて…
ほら、これ飲んで？」

「あ、りがとうございます……う”ッ…」

受け取った水を2、3口飲むと襲ってくる吐き気。
反射的に口に手を当てると右手からペットボトルの感触がなくなり薄っぺらい物に変わった。

「ほら、吐きそうなんでしょ？水は持ってておくから」

優しく背中を摩ってくれている。

俺はスッキリするまで吐き続けて水でうがいをした。

「ちょっとは落ち着いたかな？」

「は、い…」

「良かった。じゃあゴールまで行っちゃおっか
ほら、乗りな？」

有岡先輩は水と嘔吐物が入ったビニール袋を持って俺の前に背中を向けて跪いた。

これはきっとおんぶ…だよね？
申し訳ない…。

「その…自分で……」

「そんな顔色でよく言えるね
気にしなくていいから乗って？」

「……し、失礼します…」

お言葉に甘えて背中に乗ると顔色を変えずに軽々しく持ち上げてくれた。
男の俺なんて女子に比べたら重いはずなのに…。

有岡先輩の背中は温かいし優しい言葉をかけてくれるし揺れないようにゆっくりと歩いてくれるから凄く落ち着く。

無事にゴールまでつき有岡先輩の友達らしき人が近づいてきて恥ずかしくなり肩に顔を埋めた。

「大貴〜、走って戻ったのってこの子探すためだったの？」

「まぁね
それよりさ保健の先生どこにいるか知ってる？」

「さっき転んで怪我した人を保健室に連れてってたよ」

「ん、さんきゅ」

なんでこの人は喋った事もない男の俺にこんなに優しくしてくれるんだろう…。

ふと顔を上げて周りを見ると女子がこちらを睨んでくる。

…有岡先輩ってモテるもんね。

「…………」

なんだかモヤモヤして首に回す腕にちょっとだけ力を入れた。