愛に溺れ。 (ページ14)

今日:11 hit、昨日:1 hit、合計:21,686 hit

・ページ14

「大ちゃん」

「ぁ……山田…」

次の日。昇降口でスマホをいじりながら誰かを待っている大ちゃんに話しかける。

久しぶりだな……。

大ちゃんもちょっと気まずそう。

「元気だった？……って、大ちゃんは年中無休で元気少年だもんなw」

「あ、うん……まぁな！…………山田は？」

「んー、100％ではなかったかな……w」

「そっか……w」

「……噂で聞いたんだけどさ、知念と付き合ってるんだって？もしかして今も知念を待ってる感じ？」

「そ、うなんだよ……」

なんでそこで目逸らすんだよ。
さっきまで気まずそうにしてたけど目は合わせてくれたのに……。

聞きたいことは沢山あるんだよ？
“どっちから告白したの？”“いつから付き合ってるの？”
“知念のどんな所が好きなの？”

でも今は……

「これ、…覚えてる？」

「それ……っ！？」

「これね昨日見つけたんだ。遅いよねw」

「ぇ、…昨日？」

「うん。昨日。ずっとゲームばっかでさ全然漫画読んでなくて」

「そうなんだ……」

「でさ、返事待ってるって書いてあったじゃん？
だからその返事をしようと思って」

「…………」

「俺、今も昔も大ちゃんの事大好きだから
もっと早く見つけとけばよかったなぁ……w
ごめん。見つけられなくて……。
じゃ、そろそろ知念来るよな！」

涙が出そうで大ちゃんの顔を見れなくてその場から走り出そうとしたら「俺も」という聞き取れるか危うい声が耳に入った。

振り返ると大ちゃんはまっすぐと俺を見ていた。

「俺も……ごめん
もしあの時、俺に勇気があって直接伝えられてたらなんか変わってたのかもな。
……言っとくけど、俺も昔から気持ち、変わってねぇから」

「ぇ…………」

「だいきーーー！」

「っ…！」

大ちゃんの言葉に一瞬だけ時間が止まったように感じたが遠くから聞こえる声により現実へと引き戻された。

その声の正体が知念だとわかると俺の足は自然と早く進んでいた。

大ちゃんも気持ちが変わってないってことは……。

神様……。もしも本当にあなたが存在するとしたら、
俺と大ちゃんが仲良かったあの時に時間を巻き戻してください───。