【d!】ラノベのように、甘くはない Ⅳ (ページ1)

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「そう、俺を待っていただけ。お前こそ何をしている？リアム大尉。」

これはこれは、中将様が帰っていたとは。
「まだ信用に至らずわざわざ中将を呼び戻したのですか、総統様。」

小柄な容姿の犬がみるみる狂暴化したような大きな狼へと変化していく。その異様な光景に少し後退する。わんわんは総統を守るようにリアムの前に立ち塞がった。

「勘違いするな、俺は遠征任務が完了したからここにおる。お前ひとりのために戦力増強するような甘ったれた国ちゃうわ。」

「兄さん、もうええ。リアム、引き続きこの国の為訓練に励め。」

「...イェッサー。」

俺、疑われまくってるじゃん。この空気感怖すぎて耐えられないわ、総統様なんかありがとうございます、てかとっとと戻ろう。ショッピ大佐君が怒るとやばいからな。

そうしてリアムはその場から立ち去った。

「グルッペン、甘すぎるんとちゃうか。」

中将・兄さんはリアムが遠くに行ったのを確認すると、少し怪訝な顔をして言う。彼を兵士として見てきた経験があるショッピとは違い、リアムという男を知らないが故の、至って普遍的な疑い深さである。

「リアムはウートゥルメル出身の異世界転生者。どんな知識を持っていて、どんな考えを持っているのか、全くわからん。そんな奴置いておく必要ないと思うねんけど。」

「待て、異世界転生者だということは誰から聞いた。」

「ノク。」

放っておけないなと言わんばかりの反応を見せるグルッペン。グルッペンの様子から、兄さんは、置いておくのには何か意図があるんだろうと溜息をつく。グルッペンの不可解で独裁的な行動や思考などは日常茶飯事であるためそこまで心配する必要もないかと不信感を放り捨てた。

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数日後、幹部である15人が会議室に召集された。

リアム以外の14人が集まるのは約2年半ぶり。会議の内容はというともちろん、
「戦争だゾ。この前の諜報員の件を覚えとるか。主犯格が、ハーデースの者だということが判明した。後ほど詳しい説明はチーノから。」

「はい！」

そう言ってグルッペンが広げて見せたのは冥香国の地図と幹部数名のリスト。冥香国・ハーデースは死者の裁判官と言われている冥府の神・ハデスを祭る国。国民は特殊な能力により地下街に住んでいる。