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りんご飴を食べ終わりまた歩き出す。今度は初めからぴったり横に並んで歩く。こんなに近くでずっといるのも初めてだし、浴衣だから触れ合っているところからお互いの体温が直に伝わってくる。今まで感じたことがない気持ち。すごいドキドキするし恥ずかしい。
落ち着かなくてそわそわしてると、目に入ったのは射的の屋台。そこの景品には可愛らしいテディベアがあった。思わず足が止まる。
昔から一人っ子だった私は、ずっとぬいぐるみと一緒に寝ていたくらいぬいぐるみが好きだった。今でも家にぬいぐるみはたくさんあるし、こういう風にぬいぐるみを見かけるとクセで立ち止まってしまう。
有岡くんも立ち止まった私に気づいた。しまった。普通に学校生活を送っている上では何の心配もいらなかったのに、まさかここで好みがバレるとは…ドラムと同じくらい隠してたのに。
有「ん?どした?なんか欲しい物あるの?」
「えっ?いや?な、なんにも…」
言えない、高校2年にもなってテディベアが欲しいなんて言えない。
有「あ、射的?取ってあげようか?」
「だからなんにもないって…」
お願いだから何も言わないで…
有「大丈夫だよ、絶対取れるから。ほら、どれが欲しいの?」
彼は追及をやめない。言わなければ絶対にここから動かないだろう。すごい嫌だけど、彼が真剣な目で見てくるので観念した。
「…あのテディベアが欲しい」
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作者名:あんず | 作成日時:2018年6月3日 17時