56 Daiki Side ページ6
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時刻は5時。遅刻しないよう気をつけていたのでどうにか間に合った。既にたくさんの人で駅前広場は溢れかえっている。周りを見てもAちゃんはいない。でも私服でさえ一瞬分からなかったんだから、浴衣だともっと分からなそう。そう思ってきょろきょろしていると、肩を控えめに叩かれた。
貴「…ごめん、待った？」
そこにはいつもと見違えるほど綺麗に可愛くなったAちゃんがいた。やばい、本当に可愛い。
貴「…やっぱり変だよね、引いちゃうよね…」
俺があまりにも見つめてしまったから、Aちゃんは勘違いして俺が引いていると思ったらしい。
「違う違う！本当に良く似合ってるから…見惚れちゃった」
…ておい、何言ってるんだ俺！気安く見惚れたとか言っちゃったよ！
Aちゃんは一瞬驚いた顔をして、すぐに笑顔になった。
貴「良かった…やり過ぎちゃったかなって思ってすごい不安だったから」
「全然！文化祭の時もそうだけど、本当に…」
貴「…本当に？」
「…可愛いね」
あああまた言ってしまった。ただの気持ち悪いやつじゃないか俺！落ち着け！
貴「…ありがとう、有岡くんも浴衣似合ってるよ」
顔を赤らめながら言ってくれた。いくらお世辞と分かっていても嬉しすぎる。
「…じゃあ行こっか」
貴「うん」
俺は恥ずかしさを隠すために、祭り会場へと向かおうとした。すると「待って」と小さな声。後ろを向くとAちゃんが下を向いて恥ずかしそうにしていた。
「…どうした？」
貴「…人混み怖くて、はぐれちゃいそうで」
これは…もしかして…
「…じゃあ手繋いでもいい？」
貴「…うん」
嬉しすぎる。自分から手を繋ぎたいと言ってきてくれるなんてなんて可愛いんだろう。
俺は優しくAちゃんの手を取り引き寄せた。Aちゃんもぎゅっと握りしめてくれた。
こうして俺らの夏の終わりが始まったのだ。
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作者名：あんず | 作成日時：2018年6月3日 17時
