55 Daiki Side ページ5
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有岡母「ほら、あったわよ。あんた、帯結べるの?」
「…多分結べない」
有岡母「じゃあ結んであげるから、早く着ちゃいなさい」
母ちゃんに言われるがまま浴衣を着る。着付け教室に一時期通っていたらしい母は、慣れた手つきで男物の浴衣でも着付け始めた。ちょっと崩して。
有岡母「暑いだろうし、ちょっと崩した方が若者っぽくていいんじゃない?…あんた、意外と浴衣似合うじゃない」
「意外とって…失礼だな」
有岡母「でもお腹がちょっと出てるわね…お父さんの遺伝かしら」
「うるさいわ!」
悪口を言い始めた母ちゃんに反抗すると、帯でぎゅっと締められた。思わず「ゔっ」と声が出る。すると兄貴が手に何かを持って帰ってきた。
有岡兄「ほら、これ貸してやるよ、お前汗臭いから」
「さらっと悪口言うなよ」
差し出されたのは香水。柑橘系の香りでそんなにキツくなさそう。悪口は言われたけど、ありがたく受け取り、軽く付けていく。付けてる間も兄貴は「ここにも付けろ」と言って胸元にも香水を付けた。こんな所付けてもしょうがなくない?
有岡母「よし、ばっちりじゃない?これなら彼女も少しは興味持ってくれるわよ」
「少しかよ…」
散々言ってたくせに、応援は全く熱が入っていない。
有岡兄「頑張れよ!」
「…おう!」
こうして家族に送り出された俺は駅へ向かった。何だか緊張してくる。でもせっかくOKしてくれたんだから、楽しまないと。
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作者名:あんず | 作成日時:2018年6月3日 17時